家族頼みではもう限界…「生涯未婚の人」「身寄りのない高齢者」増加で懸念される格差拡大。これからの再分配政策はどうあるべきか【経済学者が解説】

家族頼みではもう限界…「生涯未婚の人」「身寄りのない高齢者」増加で懸念される格差拡大。これからの再分配政策はどうあるべきか【経済学者が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本経済の有識者である大守隆氏・増島稔氏の手によって、両氏を含む12名の専門家たちの論考が編集された『日本経済読本(第23版)』(東洋経済新報社)では「経済を理解するには、歴史、制度、事実、理論の各面を組み合わせて理解することがとても重要である。(引用元:同書はしがきより、執筆者 : 大守隆(元内閣府政策参与)」と言及されています。本記事では本書から一部抜粋・再編集し、日本の「所得格差」が拡大した背景と、今後取り組むべき課題について歴史、制度、事実、理論の各面から解説します。

再分配政策の評価

すでにみたように、再分配前の所得である当初所得のジニ係数は近年大幅に上昇しているが、再分配後の所得のジニ係数は低めに抑えられ、上昇も小幅にとどまってきた。これだけをみると、日本の再分配政策はうまく機能しているように思える。しかし、次の2点に留意する必要がある。

 

第1は、再分配効果のかなりの部分は、年齢階層間の所得移転で説明されるという点である。世帯主が退職した後の世帯は若年・中年層(現役世代)より所得が低い。公的年金などの社会保障は若年・中年層に負担を求め、高齢層に年金や医療、介護給付を行っている。その結果、年齢階層間の所得格差は縮小する。こうした年齢階層間の所得再分配の規模は、人口高齢化とともに自然に拡大するので、政府の格差是正策の成果とはいいにくい面がある。

 

第2は、再分配政策をみるうえでの生涯所得という視点の重要性である。所得格差を考える場合、これまでみてきたように現在の所得を対象とすることが多いが、生涯を通じてみれば、現役時の負担と高齢時の受給はかなりの程度相殺される。貧困の回避という視点では各時点の所得も重要であるが、格差問題を考えた場合、生涯を通じて得る所得にどの程度の格差が生じるかという視点も重要である。言い換えれば、同じ世代に属する個人の間で、生涯所得ベースの再分配がどの程度行われているかが問題なのであり、再分配政策の効果を現在の所得で測ることは過大評価をもたらしがちである。しかし、統計の制約もあって生涯所得の計算は難しく、試算や研究はいまだ限られている。

人口減少社会における再分配政策の方向性

所得格差の長期的趨勢については、経済発展の初期の段階には拡大するものの、しだいに縮小するという、クズネッツの「逆U字仮説」が有名である。しかし、どの先進国をみても所得格差は、近年程度の差こそあれ拡大に転じている。格差拡大の背後には、IT技術の高度化、グローバル化など産業構造の変化、高齢化といった要因が働いており、最近では資産格差への関心も高まっている。

 

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※本連載は、大守隆氏、増島稔氏の編書『日本経済読本(第23版)』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです

日本経済読本(第23版)

日本経済読本(第23版)

大守 隆・増島 稔(編)

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