廃棄ロス1%に挑戦
1日の利益を確保するためには、廃棄ロスも見落とせない冗費の一つです。廃棄ロスは、大きく3つの項目に分かれます。
① 厨房でのロス
②店舗でのロス
③ミス、エラーでのロス
1つ目の「厨房でのロス」には、厨房でケーキを落とした、砂糖を入れるのを失念したなどの計量ミス、シュークリームの焼きが甘いなどのオーブンでのミスなどがあります。
2つ目は、商品の売れ残りや注文の聞き間違いなどで発生する「店舗でのロス」です。そして3つ目は「ミス、エラーでのロス」です。これは、店舗側の対応に問題があったかどうかが判断しづらいため、必要経費として考えます。
厨房でのロスと店舗でのロスは、ほとんどが従業員のケアレスミスが要因であるため、日頃から気をつけて取り組めば減らすことができます。そこでケアレスミスでロスを引き起こした場合には、1枚のシートに「起こしたロスの内容」「日付」「ロスの売価」などの事実だけを書き起こします。
その際、対応策を項目に入れていないのが特徴です。私はこのロスを書き起こすという方法を社内で仕組み化させただけで、これまで3〜5%あった廃棄ロスが1%に減りました。
これは盛和塾の先輩経営者から教わった方法です。その先輩経営者は、ファミリーレストランやラーメン店など、さまざまな業態の飲食店の経営や代理店を幅広く手掛けています。
品質管理について相談しているときに、私が運営している店舗の廃棄ロスを尋ねられ、「ケーキを100個作ったら3〜5個はダメになります」と答えたら、私の利益に対する意識の低さにすごい剣幕で怒られたのです。「経常利益を1%でも上げようと思うなら、廃棄ロスはもっと下げないといけない」という話を聞き、やり方を詳しく教えてもらいました。
最初は半信半疑でしたが、翌月からすぐに取り入れてみました。すると、それまで4%前後の廃棄ロスだったのが取り組み始めた月から1%に変わったのです。優秀な店舗だと、0.3%という数字を出せるようになったのです。
ロスした内容と金額を書くだけで、なぜこんなにも効果が上がるのか――。ロスを言語化、数値化することにより、無意識行動に意識行動が加わることで、行動に変化が生まれます。
つまり、失敗した本人が自責の念を抱くだけではなく、行動に影響するからだと考えています。失敗してしまったときに反省だけで終えてしまうと、具体的な原因の理解と対応策が頭の中に残らず再び同じような失敗を繰り返してしまいます。
しかし、一度立ち止まって自分が起こしたロスを言語化することで、自分が間違った内容やプロセスが頭の中に刻まれ、記憶として残り行動に影響します。どういう対処をすればよかったのかが当事者のなかで学習されていくことに加え、ミスにより起きてしまった廃棄ロスの売価を数値化するのも大きな効果になっていると考えています。
ロスをしたことを報告書にまとめることで、同じ失敗は二度と起こしたくないという意識付けによって、スタッフは自分で成長します。
自分のケアレスミスを減らすには、各自で緊張感を持つことが必要だと思います。なぜなら、忙しいときほどスタッフはロスを起こさないからです。
ただ廃棄ロス率は、気を抜くとすぐに4〜5%に上昇してしまいます。店舗の定休日前の天候や気温の読み間違えなどは、次の日にリカバリーができず一気に廃棄ロス率が高まるため、店長はより緊張感を持って取り組んでいます。