世界基準でない「同族・親族」…日本法人が設立した現地法人が課税対象に⁉…「タックスヘイブン対策税制」に引っかかる〈親族・同族〉の古すぎる定義

世界基準でない「同族・親族」…日本法人が設立した現地法人が課税対象に⁉…「タックスヘイブン対策税制」に引っかかる〈親族・同族〉の古すぎる定義
(画像はイメージです/PIXTA)

タックスヘイブン対策税制は、世界共通で適用される制度であるにも関わらず、日本では古すぎる「親族・同族」の定義が採用されているため、日本法人が現地人と設立した現地法人が子会社とみなされ、課税対象となってしまいます。本稿では現在、カリフォルニア州にオフィスを構える国際税務のプロフェッショナルが、日本の「親族定義」について具体例を交えつつ解説します。

CFCに税制が適用されたワケ

日本では、オーナー一族が株式の過半数(50%超)を所有する会社を「同族会社」といいます。この日本独自の用語を、税法上重要な定義に押し上げたのが、「同族会社の行為計算の否認」でした。

 

「同族会社の行為計算の否認」とは、法外な金額の退職金や、めったに会社に来ない社長の妻への高額な役員報酬、社長個人の交際費の経費計上などなど、同族会社特有の経済合理性が認められない経営取引を取り締まるための条文です。

 

日本の税法上、「親族・同族」について明文化された定義は存在しませんが、民法に明記されるところによれば、日本において「親族・同族」とは以下のように定義されています。

 

①6親等以内の血族

②配偶者

➂3親等内の姻族 

 

6親等内の血族には、いとこの子(またいとこ)、3姻族には妻(夫)のめい、おいまでもが含まれます。民法に従うと、あずかり知らぬ膨大な数の「親族」を持つ人も珍しくはないでしょう。

 

「同族会社の行為計算の否認」規定の最大の形式的理由は、「親族・同族」に該当する限り、いついかなるときも皆トップの意志に従うだろう、といったある種の幻想に基づいています。時代錯誤も甚だしいですが、何よりあまりに根拠薄弱です。

 

相続手続きでさえ、親子、兄弟姉妹間のもめ事は絶えないはずなのに、「親族・同族」であるというだけで、会社経営の場が一枚岩になるはずがありません。

 

今回紹介した裁判事例も同様に、現地シンガポール人の「親族」が、偶然日本に居住する「特殊関係非居住者」に該当したために、50%超を保有すると判断されたのです。

 

つまり、たとえ外国会社の株主本人が日本に居住していなくても、株主の「親族」にあたる人間が日本にいた場合、この国ではCFC税制が適用されるということになります。

 

果たして欧米でこのような規制が通用するでしょうか。米国では、同居する「ファミリー」だけが日本の「同族」に該当します。CFC税制は世界共通で適用される制度なのだから、当然、日本の同族関係者の定義も世界標準に改めるべきです。

 

 

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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