「解放の日」は誰のため? 相互関税発動で株式市場大混乱…トランプ政権の“復活戦略”に世界が大揺れ

「解放の日」は誰のため? 相互関税発動で株式市場大混乱…トランプ政権の“復活戦略”に世界が大揺れ
(画像はイメージです/PIXTA)

トランプ大統領が発動した相互関税政策が、世界の市場に大きな波紋を広げています。関税措置の一部を「90日間停止」とする発表にもかかわらず、株式市場は歴史的な下落を記録。日経平均も急落し、世界経済は不安定な局面に突入しました。この政策の背景には、トランプ氏が長年抱えてきた「不平等な貿易」への不満と、アメリカ第一主義に基づく強硬な姿勢があります。果たしてこの一連の政策は、アメリカ経済の再生につながるのでしょうか。

相互関税発効…「90日間停止」発表も株式市場は歴史的下落

トランプ大統領が発表した相互関税が、日本時間の4月9日午後1時過ぎに発効しました。その後、中国を除く国々への一部関税措置を90日間停止すると発表したものの、株式市場には大きな影響を与え、相互関税の税率発表以降、連日にわたって歴史的な下落が続いています。

 

日経平均株価は同月7日に前日比2,644円安となり、1日の下落幅としては歴代3位を記録しました。先行きの読めない米国株式市場の急落に、日本市場も振り回される形となりました。

 

第二次世界大戦以降、アメリカが主導して構築してきた国際貿易システムに対し、トランプ大統領の政策はその崩壊を示唆するものと受け止められ、あるいはその終焉を意味するとの見方もあります。実際、一連の関税政策が国内外に多大な影響を及ぼしていることは否定できません。

 

日本ではあまり報道されていませんが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、トランプ大統領が「解放の日」と称して発動した関税について、「グローバリゼーションの時代に幕を引いた」と強く批判しています。一方でトランプ氏本人は、株式市場の下落は一時的なものにすぎず、関税発効はアメリカ製造業の「復活の日」になると主張しています。

 

また、減税や規制撤廃などの政策を通じて「小さな政府」を目指すことで、アメリカは自立した国となるべきだという発言も見られました。しかし、アメリカ国内の実情を考えると、こうした主張には懐疑的な見方も広がっています。

「関税政策」で懸念されるアメリカ経済への悪影響

まずは、復活の日が来るとして言及されていたアメリカの製造業について振り返ってみましょう。現在、アメリカの製造業は先端技術に関わる製品に集約されています。そのためそれらの製品を製造するために必要な基本原料・資材の供給は現時点では国内でほとんど行えておらず、最も安価に仕入れるなら海外のサプライチェーンへの依存は避けられません。

 

まず、「復活の日」が来るとされたアメリカの製造業について振り返りましょう。現在、アメリカの製造業は主に先端技術に関わる製品に特化しており、それらを製造するための基本原料や資材の供給は、国内ではほとんどまかなえていないのが現状です。最も安価にの調達するには、海外のサプライチェーンに依存せざるを得ません。

 

原料や資材の国内製造体制を整えるには、最低でも5年は必要とされており、しかもその段階で現在と同様のコスト競争力を持てるかどうかは不透明です。

 

また、相互関税発表以前のアメリカ経済の状況は、比較的堅調でした。GDP成長率は2.8%と先進国としては好調な水準で、失業率は4.1%、インフレ率も2.8%(日本銀行の目標である2.0%を上回っています)と安定していました。株式市場も堅調でした。

 

こうしたタイミングで、トランプ大統領が次々と不可解な政策を打ち出すことについて、多くのメディアが疑問を呈しています。

トランプ大統領を突き動かす「政治観」の正体

一見すると、MAGA(Make America Great Again)運動とは逆行するようにも見えるトランプ大統領の行動。その真意を探る手がかりは、彼の過去の言動にあります。

 

実は、トランプ氏は1980年代から40年以上にわたり、アメリカの貿易制度を「不平等」と批判し続けてきました。

 

関税がアメリカの貿易に多大な影響を与えていることはいうまでもありませんが、トランプ大統領はアメリカの貿易の現状について1980年代から40年以上「不平等である」と批判し続けていました。

 

1988年に放送された人気トーク番組『オプラ・ウィンフリー・ショー』に出演した際には、日本やクエートを例に挙げて、アメリカ市場に対する不均衡な貿易関係を批判しました。当時のトランプ氏は、「アメリカ市場で商売をしたければ、25%のフィー(手数料)を払うべきだ」と発言しています。これは、彼の不動産ビジネスに根ざした価値観が、貿易や関税にも投影されていた証といえるでしょう。

 

当時は日本や中東諸国が批判の対象でしたが、現在では中国やベトナム、メキシコなどがその矛先となっています。

 

また、近年では移民政策やオフショア生産の影響で職を失ったアメリカ人労働者の苦境を強く取り上げ、「アメリカの保護」を主張する政策を次々と打ち出しています。

トランプ政権がアメリカ経済後退を招く?

トランプ政権の多くの政策について、経済学者たちは懸念を示しています。MAGA運動をはじめ、現政権の一連の行動は「過去のアメリカの栄光」に囚われたものであり、このままでは国際関係の崩壊とアメリカ経済の後退を招くとする警告も少なくありません。

 

WSJでは、トルコのことわざを引用してトランプ政権を風刺する表現が紹介されています。

 

A clown moves into a palace. He doesn’t become a king, but the palace becomes a circus.” (ピエロが宮殿に移り住む。ピエロは王様にはならないが、宮殿がサーカスになる)

 

まったくその通りだといわざるを得ません。トランプ政権がただの“サーカス”で終わってしまわないことを祈るばかりです。

 

 

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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