止まらない“アメリカ・ファースト”…第二次トランプ政権が推進する「関税政策」と「移民政策」でアメリカはどう変わるのか、カギを握るのは米国IRSの納税者情報?【税理士が解説】

止まらない“アメリカ・ファースト”…第二次トランプ政権が推進する「関税政策」と「移民政策」でアメリカはどう変わるのか、カギを握るのは米国IRSの納税者情報?【税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

第二次トランプ政権では、かつての常識を覆すような政策が次々と打ち出されています。特に注目されているのが、同盟国をも巻き込む強硬な関税政策と、不法移民を対象にした登録制度の復活を模索する移民政策です。歴史を振り返りながら、トランプ政権が進めるこれらの政策の行方について読み解きます。

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着実に進み続けるトランプ政権の「関税政策」

第二次トランプ政権が発足してからというもの、従来では考えられなかったような政策が次々と実施されています。なかでも注目を集めているのが、同盟国をも巻き込んだ関税政策でしょう。

 

トランプ大統領は昨年の大統領選挙期間中、第25代大統領ウィリアム・マッキンリー氏を引き合いに出し、「彼を見習えば国を豊かにできる」と訴えていました。

 

日本ではまだあまり報道されていませんが、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、アメリカの関税の歴史をまとめた動画を投稿。そのなかで、マッキンリー氏が行った関税政策にも言及していました。

 

WSJによれば、マッキンリー氏の関税政策は当初こそ貿易収支の黒字をもたらしたものの、やがて異常なインフレが進行し、米国経済が圧迫された結果、関税政策は途中で断念されたようです。さらに、政策を撤回したにもかかわらず、最終的には暗殺されるという悲劇的な結末を迎えました。

 

このような過去の教訓を知りながらも、なぜトランプ大統領が関税政策にこだわるのか、WSJは動画のなかで疑問を呈していました。

1度は法制化されていた「移民の登録制度」…撤回の理由とは

一方で、トランプ政権がもう一つ力を入れているのが移民政策です。こちらは日本でも広く報道されているでしょう。


移民に関しては、経済への貢献などプラスの側面がある一方、不法滞在や犯罪行為などのマイナス面も必ず話題に上ります。現在アメリカは、移民に対してどのような取り組みをしているのでしょうか。

 

トランプ政権は、不法移民に個人情報の登録を義務づけ、応じない場合は罰金や禁錮刑を科す計画もあるとのことです。ここで移民の登録制度について振り返ります。実はこの制度は1940年に一度法制化されています。当時、アメリカ政府はテレビ広告を使い、グリーンカード保持者(永住権保持者)やビザ滞在者に加え、不法移民に対しても登録を呼びかけました。目的は、共産党員をあぶり出すためとされていました。

 

しかし、制度は高コストであったにもかかわらず、期待された効果が得られなかったため、1960年代には撤回されました。

 

トランプ大統領は就任直後から、強硬な移民政策を次々に打ち出し、大統領令や関連法令に署名。先に触れたように不法移民に対して個人情報の登録を義務づける制度も計画されています。

 

この制度では、14歳以上の移民を対象に、指紋や住所などの個人情報の登録を義務化。すでに指紋登録を済ませて合法的に滞在している者、すなわちグリーンカード保持者などは対象外です。登録を拒否した場合には、最大5,000ドルの罰金および最長6か月の禁錮刑が科されるとのことで、刑事罰として扱われる見込みです。

 

これまでアメリカでは不法滞在は「民事違反」に分類されており、拘束や国外退去は可能でも刑事犯罪としての扱いはありませんでした。これが事実上の大きな転換となります。

「不法移民の締め出し」がアメリカにもたらす未来

トランプ政権としては、登録によって不法移民の所在を把握できると同時に、登録を拒否した者を刑事犯として取り締まることができるという、まさに一石二鳥の制度だと考えているのかもしれません。

 

しかしながら、すべての不法移民を一律に取り締まるべきなのでしょうか。永住権取得時には過去の納税履歴が問われるため、不法移民も確定申告を行うことが一般的です。

 

また、Social Security Number(SSN、社会保障番号)こそ取得できませんが、日本のマイナンバーに近い位置づけである Individual Tax Identification Number(ITIN、個人用納税者番号)は取得可能です。

 

不法入国者、ビザの期限を超えたオーバーステイしている人、子どもの頃に親と共に入国した人など、不法移民の事情はさまざまです。とはいえ、多くの不法移民がよく働き、消費し、税金も納めているのは事実です。

 

これらの情報を収集するIRS(アメリカ内国歳入庁)は、「移民局とは情報を共有しない」と明言していますが、トランプ政権の今後の動向次第では、その方針も変わるかもしれません。登録制度の整備が進めば、アメリカにおける不法移民の居場所はますます狭くなるでしょう。

 

仮に、トランプ政権の思惑通りに不法移民がアメリカから一掃されたとしたら、肉体労働を担う人材をどのように確保するのでしょうか。その点についての議論が今後ますます重要になると考えられます。

 

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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