夫と夫の母親と3人で暮らしている幸子さん(64歳)
幸子さん(64歳)は夫の隆(65歳)さん、そして夫の母親である啓子さん(87歳)との3人暮らしです。もともと結婚してから隆さんの両親と一緒に暮らしており、隆さんの妹は結婚して別の場所で暮らしています。
また、幸子さんの2人のこどもも結婚し、それぞれ所帯を持っています。
3年にわたる介護期間
啓子さんは84歳のときに脳梗塞で倒れ、右半身が麻痺しています。寝たきりの状態が続き、幸子さんが食事の世話や着替えや排泄の世話などをずっと行っていました。
結婚したときから一緒に暮らしていたこともあり、お義母さんの介護をするのは「嫁の務め」だと思っていた幸子さんですが、たまには自分の用事で出掛けなければならないときもあります。しかし夫の隆さんは介護の経験がなく、なにもできません。そもそも介護を覚えようともしないのです。
また、隆さんの妹にもたまには介護を手伝ってほしいとお願いしたのですが、「それはお嫁さんである幸子さんの役目でしょう?」と令和に生きているとは思えない言葉が返ってくるだけです。
仕方なく、自分が出掛ける時間は最小限に留め、どうしても必要なときは訪問介護サービスなどを利用することにしました。
退職後も介護に否定的な夫
夫の隆さんは最近まで会社に勤め、退職しました。
隆さんが会社に勤めている間は仕方ないにしても、退職したんだから介護を少しでも手伝ってほしいという気持ちが幸子さんにはありました。しかし、いくらお願いしても「お前が一番よくわかっているんだから、お前に任せる」というだけです。「この昭和脳の兄妹が!」とさすがの幸子さんもブチ切れそうになりました。
啓子さんの亡きあとに兄弟で言い争いに
結局、啓子さんは半年後に亡くなり、啓子さんの遺産は隆さんと隆さんの妹で分けることに。
幸子さんが遺していた金融資産(2,000万円)を2分の1ずつ分ける話になっていましたが、隆さんが「うちで母さんをずっと介護していたんだから2分の1ずつはおかしい。300万円は寄与分としてこっちがもらう」と言い出したのです。つまり隆さんが1,300万円、隆さんの妹が700万円を相続する形です。
それに怒ったのは隆さんの妹です。「お兄さんはただ一緒に住んでいただけで、介護なんてしていなかったでしょう? それじゃ寄与分なんか主張できないわよ。」と言い出す始末。
お互い主張を譲らず平行線のままでしたが、確かに介護らしきことをしていないのは明らかです。一般的に見ても隆さんの主張は認められません。
結果、金融資産は2分の1(1,000万円)ずつ分ける話に落ち着きました。
しかし、それだけでは終わらなかったのです。