親の相続をめぐり、きょうだい間でトラブルが発生するケースは少なくありません。特に、財産の分け方に対する考え方の違いや、過去の感情のしこりが影響すると、話し合いが難航することも。今回の相談者・秀子さんも、母親の相続について妹との関係に不安を抱えています。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、適切な相続対策について解説します。
85歳の母の相続人は…
秀子さん(52歳女性)が相談に来られました。父親は10年前に亡くなっていますので、母親の相続人は秀子さんと3歳下の妹の二人です。
母親は85歳ですが、まだ、元気で、父親が亡くなった後もマンションでひとり暮らしをしています。
秀子さんは結婚して二人の子供に恵まれ、夫は上場企業に勤めるサラリーマンで、海外勤務もしてきました。妹は結婚したものの離婚して、現在はひとり暮らしをしています。
相続税は払える。家賃も入る
父親が亡くなったときは、母親がすべてを相続しましたので、なんら問題はありませんでした。けれども母親の相続となると簡単にはいかないと秀子さんは言います。
母親の財産は現在住んでいる自宅マンションと貸家2軒と金融資産で約1億円。相続税はかかりますが、預金で払える範囲だと確認できました。現在は2軒の貸家から家賃が入るので、年金と合わせて生活に困ることはありません。
それでも母親の相続が心配
秀子さんの一番の心配ごとは妹だと言います。夫や子供たちに恵まれて、しかも、正社員として仕事をしている秀子さんに対し、妹は離婚歴があり、子供は流産して恵まれず、いまは契約社員という立場です。
父親が亡くなって程ないころから、妹は体調を崩して入院、仕事も続けられなくなりました。そのころから、秀子さんや母親に対して不満を持つようになり、なにかとぶつかるようになったのです。
姉への妬みが爆発
その後、秀子さんは夫の勤務の関係で海外転勤となり、離れている間は、問題はなく、妹も落ち着いていました。ところが秀子さんが、日本に戻って生活をするようになってからはまた、妹の病気が再発してしまったのです。
仕事のストレスや姉への劣等感などが精神的なダメージをかかえるようになり、入院、投薬が必要になりました。母親に任せるのは大変なので、入院の保証人や手続きなどは秀子さんがしていて、定期的に様子を見に行くのですが、口を開けば病気になったのは秀子さんのせいだ、自分は犠牲になったという言葉ばかりだと言います。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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