史上最悪の火災被害を受けたロサンゼルス
ロサンゼルスの山火事は大変なことになっています。日本時間の1月31日現在、山火事はほぼ消し止められ、死者こそ能登半島地震より少ないものの、焼けた住宅は1万6,000戸以上になり、アメリカ史上最大の火災被害だといわれています。
避難命令は30万人以上に出されており、今までにないほどの大規模な火災が今なお続いています。その被害金額は500億ドル(7兆円)ともささやかれます。
私は現地の具体的なイメージを持っているので、報道を見るとあの人は大丈夫かと心配になり、連絡がつけばほっとしています。
その報道によれば、火事になった最初の3ヵ所は、パシフィック・パリセーズ、パサデナ近郊、サンフェルナンド・バレーでいずれも筆者の事務所があるトーランスからは30~50マイル(50~80キロメートル)ほど離れた場所です。外に出ると灰が舞い落ち、焦げた臭いがし、景色は茶色に見え、太陽も煙に遮断され異様な雰囲気だといいます。
火災現場では強風によって火の粉があらゆるところに飛ばされます。火の粉というよりは野球のボールよりも大きな火の玉というべきものが風にのり拡散されていきます。これによって、周りの家は次々に焼けてしまうのです。
実際にニュースで見る現場は一面が焼け野原で、まるでミサイル攻撃によって破壊された街のような光景です。
パサデナ近郊で発生した火災では、略奪が起こり、20名以上が逮捕され、1月12日より、午後6時から午前6時までの野外外出禁止命令が出されています。またすでに州兵が派遣され、治安維持のための活動にあたる見込みです。
パシフィック・パリセーズの住宅は平均価格が400万ドル(6億円)以上の富裕層が住む地域でした。家を失った富裕層はビバリーヒルズホテル、フォーシーズン、ペニュンシュラなどの高級ホテルに移り住んでおり、しばらくは予約で一杯だとの報道がありました。
これらの火災が起こった地域では、電気やガス、水道は止められています。
専門家は、焼かれた家から発生する煙には有害な化学物質が含まれていると指摘しています。PM2.5のような微小粒子も浮遊しており、家では空気洗浄機や車のなかでは外の空気を入れない設定をするように注意を促しています。
焼けた家の固定資産税はどうなる?
ロサンゼルス郡の固定資産税評価を行う機関の局長があるニュースに出ており、これらの火災被害を受けた家は固定資産税を評価される際にどう扱われるのか、という質問を受けていました。
局長は、もし建物が火災によって全壊しているのであれば、土地のみに対して固定資産税を負担するというような軽減措置を直ぐに行うとのことです。つまりは建物に対して固定資産税は課税しないということを意味します。
また、700名ほどいるロサンゼルス郡の建物の評価員を総動員して、火災被害者の家屋調査を行うともいっていました。
よく考えると、ロサンゼルス郡の最近の固定資産税の評価は、中古住宅では土地の割合が高いため、家を失った人からすれば軽減措置を受けたとしても重い負担となることでしょう。
実は、以前からロサンゼルス郡の固定資産税の評価方法の詳細は謎に包まれています。
ロサンゼルスの不動産物件を所有している日本人への相続税評価額の算定に、日本の国税当局はロサンゼルス郡の固定資産税評価額を使います。アメリカと日本では、固定資産税評価額の算定方法とまったく異なっています。
実際、ロサンゼルスで不動産物件を購入した場合、評価局の評価員が実地査定を行って、土地と建物の評価をするのではありません。中古物件であればほぼ建物20~30%、土地70~80%となります。
アメリカでは宅地と家屋を分けて評価するのには意味がなく、一軒家でいくら固定資産税(購入価格の約1.2%)を徴収するのかが問題なため、宅地がいくらで家屋がいくらかは考えないのです。
日本で一軒家を買うと、中古住宅を取り壊し、新築を建てることが多いのですが、アメリカは違います。私の経験ですが、日本人所有の家屋の評価をする場合、現地の不動産鑑定評価の業者に依頼して、実際に建て直すといくらになるのかという視点で評価をしてもらうと、建物の評価割合は大きくなります。
これは資材費や人件費が上がっているので当然です(アメリカに不動産を持つ日本人は、このような方法をとれば節税になります)。ロサンゼルス郡には柔軟な固定資産税の評価によって、被災者の負担軽減に尽力してもらいたいと思います。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾