(※写真はイメージです/PIXTA)

エリートと呼ばれるほど収入が十分にあり、堅実な返済比率に収めた場合であっても、住宅ローンの審査に通らないケースがあります。それはいったいどのような場合に起こりえるのか、具体的な事例をもとに、その理由とマイホームの購入が起因して起こる「老後破綻の落とし穴」をみていきましょう。

理想のマイホームに住めても「老後破産」の可能性大

国土交通省「令和5年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」によると、民間の金融機関が融資を行う際の「審査項目」として、下記の7つが多いことがわかっています。

 

・「完済時年齢」(98.5%)

・「健康状態」(96.6%)

・「借入時年齢」(96.0%)

・「年収」(94.0%)

・「勤続年数」(93.6%)

・「返済負担率(返済比率)」(92.0%)

・「担保評価」(91.8%)

 

このほか、「カードローン等の他の債務の状況や返済履歴」も半数以上(65.7%)の金融機関が審査項目としています。

 

A夫婦から一連の話しを聞いた筆者は、「おふたりが希望した住宅の購入は難しかったでしょう。クレジットカードの支払い延滞もその理由のひとつですが、他にも理由はあります」と言って、次のように説明しました。

 

返済後、生活資金が枯渇する可能性

現在年収1,500万円のAさんですが、給与が毎年1.5%ずつ上昇して、65歳の定年時点で年収2,000万円になったと仮定して試算してみましょう。このとき、住宅ローンの金利は返済当初の年0.4%のままで、返済まで変わらないとします。

 

すると、「繰上げ返済」をしない限り、65歳の定年後も約5年間返済が続きます。この5年間の返済が影響して、Aさんが75歳となるころには家計が破産しかねません。

 

年収が上がると天引きされる税金も増える

また、現在のAさんの手取り年収は、額面1,500万円の年収から所得税や住民税、社会保険料などが天引きされているため、約1,000万円(月額約83万円)です。今後給与が増えれば、それだけ天引きされる諸税等も増えます。

 

一方、支出は住宅ローンの返済予定額24万1,756円と、現在の家賃20万円との差額が約4万円です。

 

マンションを購入する場合、ここにマンションの管理費や共益費、駐車場代、修繕積立金や、毎年固定資産税などの固定費がかかってきます。

 

したがって、毎年約100万円(月額換算で約8万3,000円)出費が増えるため、家賃の差額とあわせると、現在より毎月約12万円、年間144万円(月約12万円)も支出が増えるのです。

 

支出が増えても、給与収入があるあいだは問題ないでしょう。しかし、65歳以降は主な収入源が年金となります。Aさんの老齢厚生年金が月26万円、68歳以降は夫婦で月30万円と収入は激減します。

 

しかし、こうなっても住宅ローンの返済額は変わりません。

 

ここまで筆者が話すと、Aさんは「幸か不幸か、クレジットの信用ブラックリストから除外されるまで5年はかかると思うので、今後の住まいと資産形成の仕方を含めて夫婦でじっくり考えようと思います」と言い、その日は帰られました。

 

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※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

〈参考・出典〉
・厚生労働省「出産費用の見える化等について」(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001143706.pdf)

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