国民が“権力者を養う”歪んだ構造
今年、モンゴルの納税者は驚異的な36.8兆トゥグルグ(約1.7兆円)を国家予算として負担することになる。つまり、国民や企業はこの巨額の資金を政府に“献上”することになるのだ。さらに、首都の予算として追加で3.8兆トゥグルグ(約1,700億円)が必要とされており、個人や企業にこれまで以上の負担がのしかかることになる。
すでに政府は国家予算と首都予算の大幅な増額を承認し、過去最高額を記録している。この結果、市民や企業、団体の財政負担はかつてないほど重くなり、家族を養うことや自分の生活を守る余裕がますます失われていく。
よく言われるように、「国家の金など存在しない。あるのは納税者の金だけだ」つまり、政府が使っている資金は国家のものではなく、国民が汗水流して稼いだものである。しかし、モンゴルではこの常識はほとんど通用しない。権力者たちは国民から徴収した税金を自身の資産のように扱い、責任もなく好きなように使い続けている。その結果、一般の国民は貧しくなり続ける一方で、経済感覚のない政治家たちはどんどん裕福になっていくという歪んだ構図が生まれている。
この格差は、労働市場にも顕著に表れている。モンゴル国労働・社会保障省が発表した「2024~2035年中期労働市場予測」に記されたデータによると、2022年の労働者の平均月収は150万トゥグルグ(約7万円)と予測されていた。しかし、実際の平均月収はわずか73万1,100トゥグルグ(約3万円)にとどまり、予測の半分以下だった。
さらに、この調査では2012年以降、実質賃金がほとんど成長していないことも明らかになった。つまり、どれだけ働いても生活の質は向上せず、国民の購買力は停滞したままなのだ。
この現状は、政府の優先事項と国民の現実との間に深刻なギャップがあることを示している。国民は増税による重圧に苦しんでいるにもかかわらず、その税収は公共サービスの向上やインフラ整備、生活水準の改善に十分に反映されていない。むしろ、税金は不透明なシステムの中で消え、非効率や管理ミスによって浪費され続けている。
このままでは、増税、賃金の停滞、格差の拡大という負の連鎖が続き、国民の生活はさらに悪化し、モンゴルの発展は阻害される一方だ。政府は、税金は国民のものであることを真剣に認識し、それを国民の生活向上のために適切に使うという意識を持たなければならない。そうでなければ、この国の未来はますます厳しいものになってしまうだろう。
