税金はどこへ? モンゴル政府の“停滞政策”
もちろん、どの国でも税金は徴収される。しかし、モンゴルとは違い、多くの国では税収が国民の生活向上や社会サービスの充実に使われている。通常、税率が引き上げられるのは、国民の所得が一定水準に達し、安定した生活が確保された後だ。しかし、モンゴルでは、国民が納めた税金が「国家予算」という巨大な“鍋”に放り込まれ、跡形もなく消えてしまう。しかも、その使われ方は、国の発展や国民のためではなく、むしろ成長を妨げるような事例が数多く報告されている。
この問題について、国会議員のN.ノムトイバヤル氏は次のように指摘する。
「税金や罰金、各種手数料に関する政策は、もはや限度を超えている。政府が進めているのは『発展政策』ではなく、むしろ『停滞政策』のようだ。企業や組織は次々に倒産し、若者たちは国外へと流出している。それも、正規の手続きを踏めないまま、不法就労に追い込まれるケースが後を絶たない。このままでは国の未来はない」
実際のところ、税金は国の発展よりも、権力者たちの利益のために使われているように見える。その典型例が、公務員の海外視察旅行への巨額支出だ。今年の国家予算では、海外派遣費に1,110億トゥグルグ(約50億円)が計上され、さらに家具や備品の購入費として2,680億トゥグルグ(約120億円)が割り当てられた。一方、首都の3万2,000世帯にストーブを配布するために使われた税金は、わずか280億トゥグルグ(約13億円)に過ぎない。
政府は「環境対策を重視する」と繰り返し主張しているが、その行動はしばしば矛盾している。本来取り組むべき持続可能な解決策ではなく、場当たり的な対策ばかりが優先され、根本的な問題解決には至っていない。このような税金の不適切な管理と、政策の一貫性のなさが、国民の生活をますます苦しめ、モンゴルの発展を阻んでいるのが現状だ。
