何十年と遡って「追徴課税」されることも…「アメリカの税務調査」に日本人が戸惑うワケ

何十年と遡って「追徴課税」されることも…「アメリカの税務調査」に日本人が戸惑うワケ
(画像はイメージです/PIXTA)

日本の税務調査に係る時効は、一般的なケースでは3年、問題が見つかったケースは5年、悪質であれば7年と定められています。ところが、アメリカの場合、過少申告の度合いや住んでいる州によって、大きく変わってきます。そのため、アメリカに進出した企業や日本人は複雑さから戸惑うケースが多いのです。本稿では現在、カリフォルニア州にオフィスを構える国際税務のプロフェッショナルが、日本とアメリカの税制の違いを具体例を交えつつ解説します。

時効期限は複雑…州ごとに異なってくる

私のオフィスのあるカリフォルニア州の例を見ていきましょう。

 

カリフォルニア州の時効期限は4年です。ただし、無申告、重大な誤り、不正のある申告書に対しては、時効がなくなり無期限になります。カリフォルニア州の税率は全米でも高いことで知られ、個人住民税の最高税率は14.4%、法人地方税の最高税率は8.84%です。

 

また、日本では考えられませんが、カリフォルニア州の外の州へ引っ越しをしたとしても、カリフォルニア州税を課そうと追いかけてくるので注意が必要です。

 

IRSの税務調査で追徴課税が発生した場合、6ヵ月以内にカリフォルニア州の税務当局であるFranchise Tax Board(FTB)に通知することを義務づけています。

 

そして、FTBに通知がなかった場合は時効がなくなるため、10年後に仮にニューヨークに住んでいようとも、カリフォルニア州からの追徴課税の通知を受け取ることになる可能性があります。

 

逆に、FTBによる税務調査が入り、調査が終わるまでにIRSの時効を超えていたような場合にはどうなるのでしょうか。

 

この場合、FTB(カリフォルニア州における税務当局)による追加徴税が発生していたとしても、IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)では時効が成立しているため、税務調査は行えません。

税務調査結果は上訴可能だが…「専門の弁護士」を雇う必要あり

税務調査の結果に不服がある場合には上訴を行います。

 

IRSの場合、IRS Appeals Officeに上訴を行い、それでも解決しない場合にはUS Tax Court(税務裁判所)で争うことになります。

 

FTBの場合、California Office of Tax Appealで争うことになります。

 

ただ、いずれの場合も裁判所でのバトルは激しいものになるのが通例で、税務専門の優秀な弁護士を雇うことがアメリカでは必要となります。

 

日本では税務署の判定が不服の場合は、国税不服審判所に、それでも裁決に納得がいかなかった場合には地裁に行きますが、複雑な税務に対して素人の裁判官が裁くことになります。

 

その点、アメリカの場合は日本とは異なり、税金問題専門の裁判所があるため、判決には信頼性があります。

 

日本の場合は国税・地方税共に明確な時効制度があるため、アメリカ進出企業や個人が違いに戸惑うことが多いため注意しましょう。

 

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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