大幅に増加した「相続税の納税義務」を負う人々
2015年1月1日から、相続税が実質的に増税となりました。「実質的に」というのは、基礎控除の額が減ったからです。
2015年1月1日以前の基礎控除額は、「5000万円+法定相続人の数×1000万円」でした。日本の標準世帯である、夫婦に子ども2人の計4人世帯の場合、両親のどちらかが亡くなって相続が発生すれば、法定相続人は3人。つまり、5000万円+3000万円=8000万円の基礎控除があったということです。
ところが、2015年1月1日以降の基礎控除額は、「3000万円+法定相続人の数×600万円」となります。同じように法定相続人を3人として計算すると、3000万円+1800万円=4800万円。2015年以前と以降とでは、基礎控除は金額にしてなんと4割も減ることになりました。
これまで相続税を支払っていた人は、2011年では発生した人全体の約4%しかいませんでした。基礎控除額が高かった分、相続税を実質的に免除されていたケースがほとんどだったのです。
ところが、2015年からは基礎控除が4割も減らされたために、今後は相続税を支払う人が倍の8%以上に増えると予測されています。
ちなみに、国税庁の最新の調査では2014年の被相続人数(死亡者数)は約127万人、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約5万6000人(2013年度は5万4000人)で、課税割合は2014年で4・4%。2013年は4・3%ですから、2013年よりも0・1%、約1300人増加したことになります。確実に課税割合は上がっているのです。すでに高齢化社会の真っただ中にある日本では、確実に死亡者数が増えていきますから、課税割合も自然増で増えていき、さらに相続税を支払う人が増えていくことは避けられない状態にあります。
今回の相続税改正において、3億円超の相続財産を持っている人は税率自体が上がります。特に、相続人一人あたり6億円超の財産を相続する場合、最高税率の55%が課税されることになります。こうしたことから、特に地価の高い東京23区内では相続税を支払う人は15%以上に上るのではないかとも予測されています。
東京郊外でも「路線価の高い土地」は珍しくない
下記に、「首都圏相続税危険度一覧」を掲載しています。東京・神奈川・埼玉・千葉で戸建て住宅や土地を持っている人を対象に路線価で単純に計算した結果、相続税の納税義務が発生する可能性のあるエリアを色分けしたものです。
これを見ると、東京23区では、相続税の納税義務が特に発生しやすい危険地域は、文京区・千代田区・中央区・港区・渋谷区・目黒区・品川区・世田谷区・中野区など、路線価の高い都心とその周辺であることがわかります。
一方、東京近郊の地域の代表例として、神奈川県の相続税の納税義務が発生しやすい地域を見てみましょう。横浜、川崎の中心地域と大田区や世田谷区に接した中原区、高津区エリアの危険度が非常に高くなっています。
同じように埼玉、千葉なども主要駅の中心周辺の地域や東京23区に接している地域の路線価が高く、相続税発生率の高い地域として考えられています。
23区内に土地を持っていなくても、路線価次第では相続税が課税される可能性があるということがお分かりいただけたかと思います。駅周辺に代々受け継がれてきた土地があるという地主の方は、今回の相続税の実質的な増税で相続税が課税される可能性が非常に高いということを、肝に銘じておく必要があります。