(※写真はイメージです/PIXTA)

熟年離婚は財産分与でもめるケースが少なくありません。夫婦生活が長くなるにつれて分与すべき財産が多くなる傾向にあるため、財産を多く持っている方は大きな痛手を受けることになります。一方で専業主婦(夫)などで長年過ごしてきた方は、より多くの財産分与を受けることで離婚後も安心して生活基盤を築くことができるでしょう。そこで今回は、ココナラ法律相談(https://legal.coconala.com/)に掲載している南宜孝弁護士に、熟年離婚における財産分与の特徴や注意点、退職金、持ち家、年金を分与する方法について解説していただきました。

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退職金の財産分与

ここからは、熟年離婚で問題となりやすい財産ごとに、財産分与の方法をみていきましょう。まずは、退職金の財産分与についてご説明します。

 

退職金の財産分与の計算式

退職金の財産分与の計算方法はケースによって異なることもありますが、基本的には次の計算式によって分与する金額を算出します。

 

退職金の額×婚姻期間÷勤続期間×1/2

 

退職金を財産分与する場合でも、分与の対象となるのは婚姻期間中の労働に対する部分に限られます。なぜなら、財産分与は夫婦が共同で築いた財産をわけ合う制度であることから、結婚前の労働に対する部分は対象外となるからです。

 

そのため、退職金の額に「婚姻期間÷勤続期間」を掛けます。なお、ここでいう「婚姻期間」とは、夫婦として同居していた期間のことを指します。離婚に向けて別居を開始した後は夫婦としての協力関係が解消されるため、その後に取得した財産は分与の対象になりません。また、財産分与の割合は原則として2分の1ずつなので、最後に「1/2」を掛けます。

 

既に退職金が支払われている場合

退職金が支払われて間もない時期に離婚する場合は、上記の計算式にそのまま当てはめて財産分与の金額を計算することができます。

 

たとえば、退職金として1,000万円が支払われたとして、婚姻期間が30年、勤続期間が40年だとすると、分与すべき金額は375万円となります。

 

退職金の額1,000万円×婚姻期間30年÷勤続期間40年×1/2=375万円

 

しかし、退職金が支払われてから離婚するまでのあいだに退職金を生活費に使われてしまった場合は、財産分与を求めることはできません。なぜなら、財産分与の対象となるのは、離婚時(同居解消時)に存在する財産に限られるからです。

 

ただし、一方が浪費などで夫婦の生活とは無関係の用途に使った場合には、その金額を財産分与の対象にすることができます。

 

退職前の場合

退職前に離婚する場合は退職金の額が不確定であることから、財産分与の計算方法が複雑になりがちです。さまざまな計算方法が考えられますが、裁判例では主に次の3つの計算方法が採用されています。

 

1.離婚時の退職金見込額で計算する(東京家庭裁判所平成22年6月23日審判)

 

2.定年時の退職金予定額から中間利息を控除して計算する(東京地方裁判所平成11年9月3日判決)

 

3.将来、定年退職してから財産分与を行う(東京高等裁判所平成10年3月18日判決)

 

退職金見込額や退職金予定額は、勤務先の就業規則や賃金規程に基づき算出します。たとえば、定年まで勤続すれば1,000万円の退職金がもらえる予定であるところ、離婚時に退職すると仮定すれば800万円になるとしましょう。婚姻期間が30年、勤続期間が40年だとして①の方法で財産分与の金額を計算すると、分与すべき金額は300万円となります。

 

退職金の額800万円×婚姻期間30年÷勤続期間40年×1/2=300万円

 

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