(※写真はイメージです/PIXTA)

熟年離婚は財産分与でもめるケースが少なくありません。夫婦生活が長くなるにつれて分与すべき財産が多くなる傾向にあるため、財産を多く持っている方は大きな痛手を受けることになります。一方で専業主婦(夫)などで長年過ごしてきた方は、より多くの財産分与を受けることで離婚後も安心して生活基盤を築くことができるでしょう。そこで今回は、ココナラ法律相談(https://legal.coconala.com/)に掲載している南宜孝弁護士に、熟年離婚における財産分与の特徴や注意点、退職金、持ち家、年金を分与する方法について解説していただきました。

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自宅不動産の財産分与

次に、持ち家である自宅不動産を財産分与する方法について説明します。

 

住宅ローンを完済している場合

住宅ローンを完済している場合は、次の3つのケースによって財産分与の方法が異なります。自宅不動産を売却する財産を渡す側が自宅不動産に住みつづける財産を受け取る側が自宅不動産に住みつづけるそれぞれのケースについて、財産分与の方法をみていきましょう。

 

売却する(現金化して、これを分与する)

自宅不動産を売却する場合は、得られた代金を2分の1ずつにわけることになります。不動産を現金化することにより、公平かつ容易にわけ合うことができるというメリットがあります。

 

この方法による場合は、自宅不動産を適正な価格で売却することが重要となります。離婚を急ぐとしても、不当な低価格で売却すると財産分与で受け取れる金額が減りますので、注意が必要です。

 

自宅不動産の評価額を分与する(自宅評価額に当たる金額を分与する)

財産を渡す側が自宅不動産に住み続ける場合は、評価額の1/2分に当たる金額を分与することになります。たとえば、自宅不動産の評価額が3,000万円だとすると、財産を渡す側がその不動産を全部取得するのと引き換えに、半分の1,500万円を相手に支払うことが必要です。

 

この方法による場合は、自宅不動産の評価を適切に行うことが重要です。財産を渡す側にとっては評価が低いほうが有利となり、財産を受け取る側にとっては評価が高いほうが有利となります。

 

一般的には、複数の不動産会社から売却価格の見積もりをとることによって評価します。相手に任せると不当に低く評価されるおそれがあるので、夫と妻がそれぞれ信頼できる不動産会社を指定し、その見積もりの平均額を評価額とするとよいでしょう。

 

持ち家に住みつづける(所有権を移転するのか、賃貸借とするのか)

財産を受け取る側が自宅不動産に住みつづける場合も、基本的には評価額の2分の1に当たる金額を相手に支払う必要があります。しかし、財産を受け取る側は多額の金銭を支払えないことも多いものです。そのため、熟年離婚ではほかの財産の分与と相殺する形で処理するのが一般的です。

 

たとえば、評価額3,000万円の自宅不動産に住みつづける場合、他に財産分与として受け取れるものが1,500万円あったとしても、それを受け取らない代わりに自宅不動産の所有権を全部取得するという処理が可能です。

 

ほかに財産分与として受け取れるものが1,500万円に満たない場合には、自宅不動産の所有権を相手に残したまま、賃貸借として住みつづけることも考えられます。評価額の1/2に当たる金額の不足分をすぐに払えないため、家賃として少しずつ払っていくという方法です。

 

住宅ローンが残っている場合

住宅ローンが残っている場合には、以下の点に注意が必要です。

 

住宅ローンは財産分与の対象ではない

住宅ローンそのものは、財産分与の対象ではありません。なぜなら、財産分与は離婚時に残存しているプラスの財産をわけ合うものであり、借金などマイナスの財産は基本的に対象外とされているからです。そのため、仮に1,000万円の住宅ローンが残っていたとしても、返済義務を500万円ずつわけ合うことにはなりません。

 

借入先の金融機関との関係では、あくまでも借入名義人が全額を返済する必要があります。ただし、財産分与を行う際には、自宅不動産の評価額と住宅ローンの残高とを相殺し、差額のみを対象とします。たとえば、自宅不動産の評価額が3,000万円で、住宅ローンが1,000万円残っている場合、財産分与の対象となるのは差額の2,000万円です。

 

アンダーローンの場合

自宅不動産の評価額が住宅ローンの残高よりも高いケースのことを「アンダーローン」といいます。アンダーローンの場合は、自宅不動産の評価額と住宅ローンの残高とを相殺した後の差額をわけ合うことになります。

 

上記のケースを例にとると、自宅不動産を2,000万円で売却できれば1,000万円ずつをわけ合うことになるでしょう。どちらか一方が自宅不動産に住みつづける場合は、差額2,000万円の1/2に当たる1,000万円を相手に支払う必要があります。

 

財産を受け取る側がすぐに支払えない場合には、賃貸借として家賃の形で少しずつ払っていくことが考えられます。

 

オーバーローンの場合(不動産を売却するか、マイナス部分を積極財産と通算する)

自宅不動産の評価額が住宅ローンの残高よりも低いケースのことを「オーバーローン」といいます。オーバーローンの場合、自宅不動産を売却するとローンだけが残ってしまいます。

 

この場合は、他の積極財産とローンの残高とを相殺し、残った積極財産の金額のみが財産分与の対象となります。相殺した結果、ゼロまたはマイナスとなる場合は、財産分与を求めることはできません。

 

夫婦のどちらかが自宅不動産に住みつづける場合には、その方が住宅ローンを支払いつづけることとして、ほかの積極財産を財産分与することもよく行われます。住みつづける方は住宅ローンを支払いつづける代わりに家賃の支払いを免れるため、自宅不動産を財産分与の対象から外すという方法です。

 

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