(※写真はイメージです/PIXTA)

相続が発生した際、遺産の分け方で揉めるケースは珍しくありません。そこで重要になるのが「法定相続分」という基準です。これを正しく理解することで、円満な遺産分割に向けた第一歩を踏み出せます。本記事では、法定相続分の基本概念から具体的な計算方法、さらに遺留分や代襲相続との違いについて詳しく解説します。

法定相続分に関する“特別な事例”

法定相続分について、特別な事例がある場合の取り扱われ方を事例ごとに説明します。

内縁関係者はどう扱われる?

内縁の妻や夫は、亡くなったパートナーの遺産を相続する権利がありません。ただし、遺言書で内縁の妻や夫に財産を渡すよう指定したり、生前に贈与したり、生命保険の受取人として内縁の妻や夫を指定することは可能です。

 

しかし、内縁の妻や夫がパートナーの財産を守るために尽くしたとしても、法的な相続人ではないため「寄与分の主張」や「特別寄与料の請求」はできません。

 

なお、内縁の妻との間に生まれた子ども(非嫡出子)は、父親が認知していれば、第一順位の法定相続人として相続権を持つことができます。

胎児にも相続権はある?

民法では、お腹の中にいる胎児も相続権が認められています(民法第886条)。そのため、胎児は第一順位の血族法定相続人として、遺産を受け取る権利を持つことになります。

相続欠格・廃除の違いは?

相続欠格と相続廃除は、相続人の相続権を失わせる制度です。それぞれ異なる理由や条件で相続権が取り消されますので、その違いを確認しておきましょう。

 

相続欠格とは?

 

民法第891条に定められた欠格事由に当てはまる場合、相続人は自動的に相続権を失います。たとえば、次のような場合が相続欠格の原因となります。

 

・殺人や殺人未遂で有罪となった場合

 

・被相続人が殺害されても通報しなかった場合

 

・被相続人が遺言しようとしたのを妨害した場合

 

・遺言書を偽造・破棄・隠した場合

 

これらの行為に該当すると、相続欠格となり、相続権を失います。

 

相続廃除とは?

 

「相続廃除」は、被相続人が特定の相続人に遺産を渡したくない場合に使える制度です。被相続人が裁判所に申し立てを行い、特定の相続人を相続から除外するよう求めます。

 

相続廃除が認められるためには、次のような事情が必要です。

 

・被相続人に対する虐待があった場合

 

・被相続人に重大な侮辱を与えた場合

 

・著しい非行がある場合

 

相続廃除が認められると、その相続人は「遺留分」と呼ばれる最低限の相続権も失います。

再構成家族における相続問題とは?

離婚後に再婚し、連れ子や新しい家族と一緒に暮らす家族を「再構成家族」と呼びます。このような家族では、相続が複雑になりやすく、特別な配慮が必要です。ここでは、再構成家族の相続の問題点と、その対策について見ていきましょう。

 

夫が亡くなったとき(一次相続)

 

たとえば、家族構成が「夫、妻、妻の連れ子、夫婦の間に生まれた子、夫の前妻の子2人」という場合を考えます。このケースでは、夫が亡くなった際の相続人は「妻」「再婚後に生まれた子」「前妻の子2人」の4人です。妻の連れ子は、夫と養子縁組していない限り、相続権を持ちません。

 

・前妻の子の相続権

 

前妻の子にも父親である夫の遺産を相続する権利があるため、後妻やその子どもとの間で遺産分割協議を行う必要があります。夫が遺言書を作成し、あらかじめ前妻の子の分を指定しておけば、協議がスムーズに進みやすくなります。

 

妻が亡くなったとき(二次相続)

 

夫が亡くなり、その後に妻が亡くなった場合、妻の財産を受け取る相続人は「妻の連れ子」と「再婚後に生まれた子」です。この場合、前妻の子には相続権がありません。前妻の子が納得しない場合には、次のような対策が考えられます。

 

・夫が遺言書を残して一次相続時に前妻の子へ多くの財産を渡す

 

・妻が前妻の子と養子縁組して、相続人として認める

 

・妻が遺言書で、自分の財産の一部を前妻の子に遺贈する

 

どの方法が適切かは、家族関係や財産状況によって異なりますが、一次相続と二次相続を総合的に考えた準備が重要です。

 

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