税務署がAさんにたどり着いた理由
「生前贈与」は節税効果の高い相続税対策であることから、子どもや孫のために活用している人も多いでしょう。
たしかに、贈与税には年間110万円の基礎控除があり、1月1日~12月31日までの1年間の贈与額が110万円以下であれば、申告と納税は不要です。
ただし、贈与契約の成立が前提となるため、贈与者(贈与する人)と受贈者(贈与を受ける人)の合意がなければ、税務署が生前贈与を認めない可能性があります。
贈与契約は口頭のやり取りでも成立しますが、第三者に証明できないため、贈与契約書を作成するなど、なんらかの証拠を残しておく必要があるでしょう。
また、税務署は、全国の国税局と税務署をネットワークで結ぶ「国税総合管理(KSK)システム」により、日本のすべての納税者の申告書がこのシステムで把握しています。
ここには、納税者が過去に提出した申告データやさまざまな税務データが蓄積されていることから、相続税の調査対象となった場合、その人の財産をおおむね把握することができます。
今回のケースでも、税務署がKSKシステムを確認したところ不審な点があり、銀行に問い合わせて預金の流れを調べることに。
その結果、毎年お正月に大きなお金の引き出しがあったため、税務署としては、この引き出した預金はタンス預金にしているのではないか? あるいは子や孫に贈与をしているのではないか? と疑問を抱き、税務調査の対象となりました。
お年玉は非課税ですが、それはあくまで“常識の範囲内”です。また、実質孫に対する贈与だったとしても、客観的に孫への贈与であることを証明できない場合、受贈者は親であると認定されることとなります。
110万円までの贈与は非課税であると広く知られているところですが、なにも証拠を残さず安易に行っている場合、のちの税務調査で、思わぬ課税を受ける場合があるためくれぐれもご注意ください。
宮路 幸人
多賀谷会計事務所
税理士/CFP
\「税務調査」関連セミナー/
「相続税の税務調査」に 選ばれる人 選ばれない人
>>1月16日(木)開催・WEBセミナー
富裕層だけが知っている資産防衛術のトレンドをお届け!
>>カメハメハ倶楽部<<
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】