なぜ観光客に嘘をつく?ストロープワッフル作りで見えた「観光地の虚構」…“興味深い事実”を偽る理由【オランダメディア発】

なぜ観光客に嘘をつく?ストロープワッフル作りで見えた「観光地の虚構」…“興味深い事実”を偽る理由【オランダメディア発】
写真:de40plusvrouw (Pixabay経由)

観光産業が“興味深い事実”を意図的に省略したり、物語を脚色したりする背景にはどのような狙いがあるのでしょうか──観光地で語られる“物語”は、単なるエンターテインメントの域を超え、「なぜ真実を伝えないのか?」という疑問を引き起こします。本稿では、オランダの政治経済や金融、不動産に関する情報を発信する現地メディア『DutchNews.nl』のコラムニストが体験したストロープワッフル作りのワークショップを例に、真実と虚構の境界を探り、その選択が観光産業に与える影響について考察します。この記事は、『DutchNews.nl』の記事を翻訳・編集したものです。

ストロープワッフルの真実……少年ガイドが語る“甘い歴史” 

エプロンとシェフ帽を身に着けた別の10代の少年が、ストロープワッフルの歴史を語り始めた。このおいしいシロップ菓子の起源ははっきりとはしていないが、食品史の専門家たちはこのテーマについて本を何冊も書いている。ストロープワッフルがゴーダで18世紀末から19世紀初頭に生まれたことはわかっているが、「他のビスケットの端切れを使って作られた」という伝説を裏付ける証拠は存在しない。

 

歴史家J.A.デ・コルテ氏によれば、初期のレシピには端切れを使ったという記録は見られないそうだ。また、当時は職人組合が廃止され、地元新聞もなかったため(地元ジャーナリズムの重要性がここにある)、正確な誕生年を特定するのは難しいのだ。さらに、パン屋は個人経営が一般的で、創作物を巡る法的な争いもなかったため、法的な記録も残されていない。

 

それでも少年ガイドは、ストロープワッフルが発明された具体的なパン屋や、地元の子供たちの間で人気が出た経緯など、詳細な歴史を語り続けた。さらには、ゴーダチーズもゴーダで発明されたと説明した(実際にはゴーダチーズはそこでは製造されておらず、取引されていただけである)。

なぜ真実より「物語」を選ぶのか? “イーストの謎”と偽りの歴史

私は、観光客が大げさな物語を期待している場合、偽の幽霊話などが必要になることは理解している。しかし、ストロープワッフルの既知の歴史そのものが十分に面白いのだし、その起源について完全にはわかっていない理由も興味深い。同様に、ゴーダチーズの正しい歴史も興味を引くものだ。だからこそ、なぜ日曜の朝、ダンスクラブが即席のパン屋になった場所で嘘を聞かされなければならなかったのか疑問に思った。

 

その欺瞞はさらに続いた。私たちが使用したレシピにはイーストが含まれていたが、パンを作ったことがある人ならわかるように、イーストには効果を発揮するための時間が必要だ。しかし私たちは、ストロープワッフルの生地を作ってすぐに熱い鉄板に乗せて焼いた。そのため、イーストは完全に無意味だったが、完成品はおいしかった。

 

では、なぜイーストが含まれていたのだろうか? 25ユーロ(約4,000円)を支払ってこの教室に参加した誰も、イーストが入っていないからといって怒って帰るようなことはしないはずだ。それなのに、なぜ物語やレシピに虚偽が含まれていたのだろうか。その明確な理由はわからないが、少なくともストロープワッフルの作り方は学ぶことができた。

 

おそらく、観光地で虚偽の物語が語られるのは、単に面白さを追求するだけでなく、観光地にふさわしい雰囲気を作り出すためではないだろうか。観光客は事実よりも、潜在的に“その場所らしい魅力的な”ストーリーを求めることが多く、歴史や文化に対する期待を超えるエンターテインメントを提供することが求められる。ストロープワッフルの歴史が事実として面白くても、観光地ではその場の雰囲気に合った物語を語ることが、より深い印象を与える手段となるのかもしれない。

 

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この記事は、GGOが提携するオランダのメディア『DutchNews.nl』が2024年11月28日に掲載した記事「A sticky business: Why is everyone lying to tourists?」を翻訳・編集したものです。

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