現状の成長率では高所得国には届かない“現実”
しかし、現状のタイとインドネシアの経済成長率では、どちらの国も高所得国の地位に到達するには不十分であると同氏は強調した。昨年の年間GDP成長率は、タイがわずか1.9%、インドネシアが5%にとどまった。
「両国は、外国直接投資の増加と生産性の向上を通じて、経済成長をさらに加速させる必要があります。タイは年間7%、インドネシアは8%の成長を達成することが求められます。特にインドネシアの場合、経済成長の鍵を握るのは投資であり、投資対GDP比率を50%から54%に引き上げることが必要です」とバスリ氏は説明した。
また、インドネシアの国内貯蓄率がGDPの約36%と低いことを指摘し、8%の成長目標を次期大統領の任期終了までに達成するためには、外国直接投資を積極的に誘致する必要があると強調した。
AI時代に求められる「官僚機構の俊敏性」
さらに、投資を引きつけるためには、AI(人工知能)の開発を支える俊敏な官僚機構の構築が重要であるとバスリ氏は指摘する。一見すると、規制当局に俊敏性を求めるのは矛盾しているようにも思えるが、AIに関連する課題を適切に管理するための明確な原則を確立することが不可欠だと強調した。
バスリ氏は、AIが生産性を向上させ、運用コストを削減する可能性を秘めている一方で、政府はAIの迅速な導入を可能にするために、労働力開発への投資が必要だと述べた。
「政府や雇用主は、学校や企業で従業員に必要なスキルを習得させる研修プログラムを提供するべきです。また、法的な調整も必要になりますが、これらは慎重に進める必要があります」(バスリ氏)
現在、インドネシア最大級の銀行の会長を務めるバスリ氏は、その銀行が特に富裕層顧客のプロファイリングにAIを活用していることを明らかにした。以前は情報の非対称性により高コストが伴っていたが、AIの活用によって市場セグメンテーションや金利分析が大幅に効率化されたと述べている。
トランプ氏の政策転換により、東南アジアは新たな経済成長のチャンスを迎えている。しかし、持続的な発展には、各国の迅速な改革と戦略的投資が不可欠だ。今後の動向に注目が集まる。
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