個別のファンドを組みわせた資産配分の変更・修正の仕方、2つ
バランスファンドは、投資信託を保有している60歳以上の方の48.0%が保有しているとする調査結果があることから、それ以外の方々は個別の投資信託を組み合わせて保有していることになり、投資信託保有者の約半数は自分で分散投資の内容を決めていることと考えられます(投資信託協会「60歳代以上の投資信託等に関するアンケート調査」2022年)。
個別のファンドを組みわせた資産配分の変更・修正の仕方については、大きく分けて2つの手法があります。
証券市場の状況に応じて短期的な観点から取り組む「タクティカル・アセット・アロケーション」、すなわち戦術的資産配分と、「ダイナミック・アセット・アロケーション」、すなわち動的資産配分と呼ばれて証券市場の価格変動は正しいものとして見直しを行う手法です。
いま、分散投資の対象のなかのある資産、たとえば日本株式の価格が上昇したとしましょう。
ダイナミック・アセット・アロケーションでは値上がりした価格は割高ではなく、正当な価格である、つまり市場の証券価格についての情報処理は効率的であり、経済情勢が変化し、企業業績も変化して株価水準も変わったとして値上がりした資産の投資割合をそのままとし、またはさらに買い増しを行います。
つまり、市場の変化について「順張り」と呼ばれる投資を行うとされています。これを長期的に続けると市場の変化に追いついてゆくことになり、理屈の上では世界の債券、株式にインデックス運用を行う運用へと近づいてゆき、リスクとリターンの関係は改善されることになります。
タクティカル・アセット・アロケーションは一定の投資尺度に基づいて各アセットクラスの資産配分比率を決定する手法で、比較的短期的な局面ごとに各資産の最適な組入比率を修正する手法であり、市場の状況を絶えず観察していなければならないことになり、一般のシニア世代の方々の堅実な資産運用には不向きといえます。
ダイナミック・アセット・アロケーションは逆に、その資産の価格が下がれば、その資産への配分を減らすことになります。この手法は、値下がりのときは資産運用での損失を小さくできる方法といえます。
「恐怖指数」を使った「リスクコントロール運用」という手法も
さらに、リーマンショックのあとにバランスファンドの資産配分の変更で見られるようになった手法で、リスクコントロール運用という手法があり、コロナショックのときに効果を発揮しました。これは市場の変動性が高まるとき、機動的に国内債券のようなリスクの低い資産の割合を増やし、市場の変動性が小さくなるとリスクの大きな株式投資の割合を増やしながら運用する手法です。
その市場の変動性の高まりの指標としてVIX指数(Volatility Index:ボラティリティー・インデックス)があり、恐怖指数と呼ばれています。この指数は米国の株式指標であるS&P500 の市場参加者の変動性の見通しを表したものです。
実際、この指数を用いた分析により、リスクコントロール型ファンドの有効性を示す報告もあります。(高岡和佳子「リスクコントロール型ファンドは過剰なリスクを回避できるか」ニッセイ基礎研究所、2020年)この報告では、VIX指数によって示される市場参加者の不安感の変化をとらえたリスクコントロール運用の有効性が示されています。
しかし、シニア世代の方々がこうした運用を行うのであれば、資産配分を固定しないことを運用方針としているバランスファンドを少額保有するなどして、その資産配分を模倣しながら運用されてはいかがでしょうか。
先述のようにバランスファンドを保有せず、自分で資産配分を行うことを好まれる方々は多いわけですが、プロでも難しい市場分析をアマチュアの個人投資家が行うことは困難ですので、一定の評価を得ているファンドをモデルとして選び、活用してはいかがでしょうか。
藤波 大三郎
中央大学商学部 兼任講師
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