(※写真はイメージです/PIXTA)

ハリス優勢と報じられていた米大統領選挙は、ふたを開けてみればトランプの圧勝。対中関税リスクが叫ばれつつも、堅調なマーケット……こうしたなか、「専門家」と呼ばれる人たちの信頼性に疑念を抱いている人が増えています。そこで、フィデリティ・インスティテュート主席研究員でマクロストラテジストの重見吉徳氏が、情報収集の心構えとともに、足元の市場から推測される「年末にかけての相場リスク」について詳しく解説します。

証券会社の日常業務

まず、証券会社は、

 

a.新規に発行・公開される債券や株式の引き受け

b.顧客から中途買い入れを行った有価証券

c.自己投資ポジション

 

などのために有価証券を持つ必要があります。

 

ただ、証券会社は銀行ではないため貸出の機能がなく、政府による社会保障給付やインフラ・軍事支出などの支払先である家計や企業の預金口座も持っていないため、証券会社には預金(お金)はありません。そこで、証券会社は、買い入れる有価証券を担保に入れることでお金を借り(これがレポ調達)、これによって有価証券を保有します。

 

レポによる資金調達は住宅購入に似ています。われわれが住宅を購入するとき、多くの場合、「住宅を買いたいがお金はない」状況です。そこで、われわれは買い入れる住宅を担保として銀行に差し入れることで住宅を持つことができます。また、「居住」というサービス(効用)を得られます。同様に、証券会社は(住宅ではなく)有価証券を担保に入れることで、まさにその有価証券を保有することができるというわけです。

 

たとえば、プライマリー・ディーラーと呼ばれる(新発米国債の入札に参加する資格のある)大手の証券会社は、財務省から入札で米国債を買い入れます。

 

このとき、顧客から事前の購入申込みがあった入札分については、顧客の口座から代金を引き落として、財務省に支払えば済みます。

 

他方で、顧客からの事前購入申込金額を「超える」入札分については、証券会社が保有することになるため、(当然ながら)証券会社自身が買入代金を用意しなければなりません。

 

米国債の標準決済は「T+1」(約定日の翌日に決済)ですから、仮に、証券会社が財務省から米国債を受け取った日に、別の顧客やディーラーに、(売れ残った・余った)米国債を「売却約定」しても、それを「受け渡す」のは翌日のことです。ですから、証券会社は(初日に売れ残った)米国債を少なくとも翌日までは持ち越す/保有する必要があります。

 

翌日までの持ち越し=買い持ちで発生する金利リスクは、米国債先物を売るなどして調整・ヘッジしているので問題にはなりません。しかし、米国債の現物を翌日まで持ち越すためには、先に述べたように、財務省に支払う買入代金を用意する必要があります。

 

そこで、証券会社は、(入札で財務省から買い入れてくる)米国債を銀行やMMFに即座に担保として差し入れることで(たとえば、1日だけ)お金を借り、そのお金を財務省に支払うことで、米国債を保有します。

 

すると当然、翌日になれば、証券会社は、銀行やMMFに資金を返済する必要が生じます。前日のうちに米国債を「売却約定」していれば、買い入れる顧客からの受取代金を、銀行やMMFへの返済に充てられます。しかしその時点でも、売れ残っている米国債については、さらにもう1日保有が必要になります。そこで、その米国債を再び銀行やMMFに担保として差し入れることで、もう1日資金を借り、ポジションをつなぎます。

 

あるいは、別のシーンで、顧客が(過去に購入した)米国債を中途売却したい場合、証券会社は米国債を買い取る必要があります。「買い約定」したその日のうちに、まったく同じ米国債を(同額分だけ)買いたい他の顧客が現れれば、同日に「売り約定」ができて、翌日(T+1)の決済日に相殺できます。しかし、そうでなければ、やはり証券会社は米国債を抱えて翌日に持ち越さなければなりません。そこで、証券会社は、銀行やMMFを相手にレポに取り組むのです。

 

このように、証券会社は、抱える有価証券(住宅)を担保に差し入れて有価証券(住宅)を担保に差し入れて有価証券(住宅)の購入代金を調達します。

 

重要な点を確認しておくと、資本市場で発行される巨額の有価証券のほとんどすべては、いったんは、証券会社のバランスシートで引き受けられます。そうした有価証券がレポ取引で資金調達されているわけですから、レポ市場は資本市場の根幹といえます。

 

次ページレポとは②外銀とヘッジファンドの投資手法

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