潤沢な老後資金がある70代夫婦の家計が「赤字」なワケ
水口洋一さん(仮名・71歳)と妻の真理子さん(仮名・71歳)はともに国家公務員として定年まで勤務していました。
夫婦で持ち家に住み、年金は月37万円。これは平均的な年金生活者と比べても十分な額です。退職金は2人あわせて4,000万円を受け取り、加えて老後生活に備えて2,000万円の資産を築き上げていました。そのため、退職時の金融資産も6,000万円と余裕のある金額でした。
一見、大きな家に住み、悠々自適な老後生活を送っているように見えた水口夫婦。しかし、実際のところそうではありませんでした。きっかけは、夫婦の定年後、1人娘の京子さん(仮名・38歳)が離婚したことでした。離婚した京子さんは、小学3年生の孫娘を連れて実家に戻ってきました。
それ以降、二世帯での生活が始まります。元は専業主婦だった京子さん。円満離婚ではなかったようで、養育費をはじめとした金銭的援助を一切受けられておらず、実家に戻り次第、職探しからのスタートです。孫娘は私立小学校に通っており、学費の問題もありましたが、本人の「辞めたくない」という気持ちを汲んで、水口さん夫婦が学費を援助することにしました。同様に3歳から習っているバレエも続けさせることに。京子さん親子の食費や光熱費などもすべて水口さんが負担しているため、毎月の出費は2人の年金を合わせても赤字で、預貯金を取り崩している状況でした。
働く気はある京子さんでしたが、ブランクがあったことと、子どもが小学生のうちはなるべく長時間働きたくないということで週3勤務を希望し、職探しは難航。希望通りの事務職の仕事を見つけるまでに、1年近くを要しました。実家が裕福なのでなんとかなる、という気持ちもあったのかもしれません。
最初は、愛する娘と孫のためならできる援助はなんでもしてやろう、という気持ちでいた水口さん夫婦でしたが、いくら潤沢な資金があれど、このペースでお金が出ていくのは危険かもしれない、と徐々に考えるようになってきました。加えて洋一さんの母親が生前に所有していた、遠方にある農地を相続しており、この農地にかかる固定資産税などのコストも問題となっていました。