婚姻関係はもつれの原因になることも
今回の件のように、相続は感情が絡んで問題になってしまうことが多いものです。そして、明美さんの言い分も理解できますが、やはり最終的には法律が基準となってきます。
今回の件は亡くなった哲也さんが自身の想いを残し、対策をしておくことでトラブルを防ぐことができたでしょう。しかし、生命保険の名義人は相変わらず幸さんのまま、離婚することもなく体裁を気にして婚姻関係を続けてしまい、幸さんに相続権の大半を渡してしまったことが問題です。
状況的には早々に離婚し、しっかり財産分与等について話し合って決着をつけておくべきだったでしょう。またその後も、60代とまだ若かったとはいえ、自分の死後のお金の問題について考えていなかったことが大きな問題といえます。
哲也さんにとっての親族は姉だけになります。20年ものあいだ婚姻関係にあったとはいえないような状態の妻に財産が渡る状況であれば「姉に遺産を渡したい」という意思表示と対策を生前にしておくべきだったでしょう。
反対に、事実婚状態であった場合には法定相続人になることもできますが、事実上の婚姻関係であったことを申し出る必要があり、そうでないと遺産を受け取ることができない場合もあります。
「相続なんて自分には関係ない……」こう思っている人も多いでしょう。しかし、このような理由でトラブルになることもあります。相続のトラブルは財産の多い少ないに関わらず誰にでも起きる可能性がありますので、自分はどうしたいのか、元気なうちに考えておくことが大切です。
いつ亡くなるかは誰にもわからない
今回の事例のように、「相続」はお金持ちだけが考えなければならない問題ではありません。2020年の司法統計によると調停・審判となった事例の80%近くは遺産の金額が5,000万円以下で起きています。
自分の財産を誰にどのくらい渡したいのか、そのためにどうしたらよいか、いまのままで遺された家族が困るようなことがないか、まずは自分の意思とそれに対する問題を知り、どうしたらよいかを考えて対策する必要があります。
自分の死後に家族が困るようなことになるのは誰にとっても不本意なはずです。そして、人生の最期は誰にでも必ず訪れるものです。そのときに自分や家族が困らずにいられるように、相続のことを考えておきましょう。
小川 洋平
FP相談ねっと
CFP
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