仕事一筋の夫、定年後はどうするか
Aさんは、プライム企業で部長にまで営業一筋でのぼりつめた、現在70歳の男性です。子育てはほとんど奥様に任せきりでしたが、かわいい1人娘は20年ほど前に嫁ぎ、それからは夫婦水入らずの生活を送っています。
娘が嫁いで妻と2人きりの生活になったタイミングで、老後について考えはじめました。仕事を生きがいにしてきたため、特にやりたいことはなかったものの、いままで仕事に忙殺され、妻とゆっくりとした時間を過ごせたら、妻に恩返しができたら、とぼんやりと思っていました。
転機…軽井沢という新たな選択肢
あるとき、YouTubeを流し見していると、軽井沢暮らしを送る夫婦の動画が流れてきました。「軽井沢か……」昔、家族で夏に訪れたことがあったAさん。「夏なのに、木陰はウソみたいに涼しくて過ごしやすかったなあ」パソコンからアルバムフォルダを検索して、その日はついつい夜更かしして当時の思い出に浸ってしまいました。翌朝、目が覚めても余韻が続いていたAさん。「決めた」とつぶやき、妻へ話を持ちかけます。
「定年後は軽井沢に別荘を購入してリゾートライフを送らないか」妻は最初こそ驚くものの、「それも素敵ね」と乗り気な様子。ざっと調べたところ、物件も退職金があれば予算内で購入できそうです。
老後に期待を膨らましつつも、Aさんのまじめな性格は悪い方向に働き、じっくりと老後のことを考えることなく退職の日まで仕事ばかりしていました。いざセカンドライフが始まると、誰に相談するわけでもなく一目ぼれした軽井沢の別荘を、65歳で退職金のすべてを費やし、現金一括で購入することになります。
不動産の現金一括購入
メリット
最大のメリットは、融資を利用しないため利息の負担がないことです。たとえば、3,000万円の不動産を1%の金利で購入すると、支払総額は約3,500万円にもおよびます。しかし、現金一括で購入すればその分約500万円の利息を抑えることが可能です。
また、住宅ローンの返済に悩まされることもなくなります。返済に追われるメンタルは想像以上に大きいため、Aさんのように現金一括購入なら安心した暮らしを送れる人は多いでしょう。
デメリット
現金一括購入には思わぬ落とし穴があることも事実です。保有する現金が大幅に減少するからです。ライフプランにおける予期せぬトラブルで急に大きな現金が必要なとき、手元に十分な現金がなく対応できないリスクがあります。そのため、一定の現金を残しておくなど資金計画が必要です。
Aさんは、定年退職後に「これからは大きなお金がかからないだろう」と思い別荘を一括で購入しました。これらデメリットを検討することなく購入に踏み切ったということです。この判断が、その後のAさんのセカンドライフに影をもたらすことになります。
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