子育てを終え、卒婚したシニア夫婦…夫亡き後、扶養に入っていた妻が受け取る「驚愕の遺族年金額」【弁護士が解説】

子育てを終え、卒婚したシニア夫婦…夫亡き後、扶養に入っていた妻が受け取る「驚愕の遺族年金額」【弁護士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

最近、50代以上の夫婦で「卒婚」するカップルが増えているといいます。卒婚とは婚姻関係は解消しないまま夫婦が没交渉となり他人のようになることです。また卒婚状態では済まず、定年になった時点で離婚してしまったり、熟年離婚したりする夫婦もたくさんいます。本記事では、シニア世代の離婚について、Authense法律事務所の白谷英恵弁護士が解説します。

シニア世代のさまざまな夫婦のカタチ

「卒婚」とは?

卒婚とは、子育てを終えた熟年夫婦が離婚をしないまま夫婦関係を卒業することです。つまり、離婚届を提出しないだけで、事実上夫婦としてのコミュニケーションや関係を断ち切ります。典型的なケースでは「別居」しますが、「同居のまま」卒婚するご夫婦もいます。

 

卒婚の動機は、長年一緒に暮らして相手に嫌気がさしたことです。特に「夫が働いて妻が家を守る」というロールモデルのもとで生活してきた場合、妻が現状に不満を抱いて卒婚を希望するパターンが多くなっています。

 

「定年離婚」とは?

定年離婚とは、夫が定年になったタイミングで離婚することです。退職金も入ってくるので、それを財産分与することにより、夫婦の離婚後の生活もある程度維持できると見越しています。「第二の人生は自分の自由に歩みたい」と希望して離婚に踏み切るパターンです。

 

「熟年離婚」とは?

熟年離婚は、年数を重ねた夫婦が離婚することです。定年を機に離婚する場合もありますし、定年前や定年後何年も経って70代で離婚するパターンもあります。

卒婚と離婚の違い

卒婚と離婚の決定的な違いは「婚姻関係を解消するかどうか」です。

 

生活費の分担義務

卒婚の場合、夫婦関係は解消されないので完全に「一人」になるわけではありませんし、生活費の分担義務も残ります。夫婦にはお互いに扶助義務があるので、別居型の卒婚を選択する場合、収入の高いほう(多くは夫)は低いほう(多くは妻)へ生活費を払わねばなりません。別居状態を解消するか離婚が成立するまで生活費の分担義務が続きます。ただし離婚しないので、財産分与は行いません。

 

一方離婚すると、離婚後は生活費の分担義務がなくなります。ただし離婚の際には退職金なども含めて財産分与を行うので、財産が一気に目減りする可能性があります。

 

遺産相続権

卒婚の場合、配偶者としての関係が継続するのでどちらかが死亡したら「遺産相続」が発生します。卒婚して別居して没交渉にしていても、「配偶者」として2分の1~4分の3の高い割合で遺産を相続することが可能です。

 

一方、離婚すると遺産相続権はなくなるので、相手の遺産を相続することは不可能です。

 

年金について

卒婚の場合、年金は「1つの世帯」であることを前提にして計算され、振り込まれます。配偶者加算などもあるため、1人のケースより金額が大きくなっているケースもあります。

 

そして多くの場合、夫が亡くなったら妻は遺族年金を受け取れます。一方離婚してしまったら、年金は夫と妻それぞれの分が計算されて個別に振り込まれます。夫が受け取る金額は夫婦のときよりも少なくなりますし、婚姻中に夫の扶養に入っていた妻が受けとれる年金は月額6万円程度です。

 

また離婚時に年金分割すると、夫の年金はさらに減らされます。妻の年金は数万円程度加算されますが、生きていくのには十分ではありません。卒婚を続けて夫が死亡した場合の遺族年金と比べると、年金分割で加算された年金は少額であるケースが多数です。

 

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