老後の生活を維持するためにAさんが始めたこと
貯蓄は底をつき、家ですることもなくなってきたため、Aさんは新しく働き口を探すそうです。
ただ、A家の今後の支出は、減少する傾向にあります。たとえば、1年間延びた長男の教育費の負担は、卒業の見込みが立ち、都内の会社にも内定したそうです。就職後は厚生年金に加入しますから、現在、世帯で納付している国民健康保険料の長男分の月2,000円程度、また食費なども減らせます。
現在の家計支出からも、加入中の保険の保障内容やサブスク、携帯電話などの契約内容を見直し、毎月の負担額を軽減することが可能です。
筆者が簡易的に試算しても、約月6~7万円削減はでき、年間50万円は、今後の介護や看護の費用などに充てられるでしょう。
未設計で迎える老後は危険
その後、しばらくしてAさんが仕事帰りに筆者の事務所に寄ってくれました。現在は現役時代の事務系の業務とは異なる、一度やってみたかった造園の仕事に就いているそうです。
また、長女は自治体の「ひとり親家庭の支援」制度を活用しながら、娘と孫で新しい生活を始めたそうです。A夫婦は、今後は経済的な支援ではなく、よき相談相手に徹することにしたそうです。
Aさんは、「計画通りに退職金を使い、残高が減ってもなんとかなるだろうと、あのまま生活を続けていけば、家計が破産したかもしれません。また住宅ローンも、退職までに完済できるように借りれば、退職金に手を付けることもなかった。後悔先に立たずです」と日焼けした顔で笑っていました。
家庭によって、老後生活の準備は30代、40代からすでに始まっているといえます。
「お金のことを考えるのは煩わしい。ましてや老後のプランを立てるのはなおさらだ」と思うのではなく、限られた年金収入や退職金で老後を過ごすには綿密なプランニングが欠かせません。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
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