(画像はイメージです/PIXTA)

在宅診療クリニックでは、総合病院とはまた違ったクレーム事例が生まれる傾向があります。在宅診療医の野末睦氏は、こういった理不尽な要求やカスハラを防ぐためには「在宅診療という医療サービスへの理解の浸透が必要」と語ります。在宅診療クリニックへのクレーム事例を解説します。

クレームから脅迫に発展したケースも

訪問診療は病院のような検査機器を持っていけるわけではありません。血液検査が必要と診断した際に、その場ですぐに検査することはできません。その結果「すぐに検査結果が知りたいのに」といったクレームに発展してしまうケースがあります。また、ネットで見た軽微な情報を鵜呑みにして「この治療法は大丈夫ですか」といった問い合わせがくることもあります。

 

また、「人間は治療をすれば必ず治る、病気は治るものだ」と思い込んでおり、完治に向けて診療を受けようとする方がいます。在宅医療が提供するのは「治すための医療」というより「より質の高い療養生活を送ってもらうための医療」です。それを理解してもらう必要があります。

 

これまでで悪質だったものの1つが「ネットに対応の悪さを晒すぞ」と言われたことです。とある若い医師を標的にしたクレームでしたが、詳しく事情を調べたところ落ち度は確認できませんでした。

「クレーム」に発展する2つの原因

私が運営する法人内のクリニックの1つで起きた出来事です。ご家族が亡くなられたことに納得できないご遺族から、幾度となくクレームを受け、都度ご遺族のところに出向き、「治療の方針」や「亡くなった経緯」を繰り返し説明しました。

 

ところが5回、6回と足を運んでも状況は変わりませんでした。最終的には「私たちにできることはすべて行ってまいりました。これ以上できることはないので、今日で話し合いは最後にさせていただきます。もし、これ以上何かお求めでしたら、第三者を介していただいて構いません」というやり取りでご遺族宅を後にしました。

 

在宅診療クリニックでは「終末期の患者さんを診ている」という点、「診療できる内容に限りがある」という点から、総合病院とはまた違ったクレーム事例が生まれる傾向にあります。

 

そうしたことを理解したうえで齟齬が生じないよう「治療方針に納得してもらう」「患者さんやご家族と話し合う」という基本動作をしっかり行うことが大切です。

 

 

野末 睦
医師、医療法人 あい友会  理事長

 

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