身近なものでできるさまざまな工夫を
こういったことは、必ずしも本人からはっきりと要望が来るわけではありません。なんとなく不機嫌そう、身体の違和感が気になりそわそわしている、イライラしているなど、ちょっとした様子の変化を見極め、心情をくみ取ることが大切です。
私たちが少しでも楽に過ごしてもらえる方法はないかと考えて、気遣いすることが大切だと考えています。どれもケアプランに書かれていることではないので、費用は私たちの持ち出しになりますが、効果はとても大きいです。汗で不快になりがちな夏場を快適に、気持ちも安定して過ごしてもらうことができるのです。
むしろ資金がなかったからこそ、身近なものを活用して、利用者が快適に過ごせるように工夫ができたのではないかと思っています。例えば、どうしても車いすの利用者などは、座りっぱなしで夕方になると足がむくんできてしまいます。そんな時は、牛乳パックで作った手作りの足置きに足を置いてもらっています。「脚がつらくなくていいわ」と利用者からも評判です。
このほか、口腔ケアのために、食後はお茶でうがいをしてもらうなど、身近なものでできるさまざまな工夫をしています。ちなみに、ちまたでは介護ロボットの導入も進んでいるようですが、私たちの施設では高額なロボットは導入していません。
また、こちらは完全にアナログなのですが、福祉用品として販売されている、赤ちゃんと同じ重さの人形などは、利用者にとても喜ばれています。昔、助産師として働いていた人などは、よくその人形を抱っこして昔を思い出していました。楽しく昔を思い出してもらえることは、認知機能の維持にもつながります。高額なロボットを導入するよりも、むしろそういった温かみを感じるもののほうが、かなりやの利用者には好評です。
久野 佳子
デイ・サービス かなりや
代表取締役