決算書分析の範疇を超えているが…
さて、売上総利益率をあげるためにはどうすればよいでしょうか。以下のような要因がある場合の対策案としては、次のようなものがあります。
ただし、これらの分析は決算書の範疇を超えています。分析できるデータや資料が手に入ることが前提です。どういう対策を打てばいいかは、残念ながら決算書は語ってくれません。こういう方向に改善すればいい、という段階に止まります。
①販売数量の低下
商品サイクルの寿命なのか、ライバル商品の出現なのか、販売拠点や販売網が他社に比べて弱いのか、いろいろな角度から分析します。
②販売単価の低下
競合他社の動向を見ながら、当社としての販売戦略を打ち立てていきます。商品の機能やアフターサービス、品揃えによって差別化が図れる業種ならば、極力そちらに経営努力を傾け、単なる価格競争にならないようにします。
③得意先の構成による粗利益の低下
多くの場合、大口得意先の比重が増えていることが考えられます。大口の客が増えて、販売量が増加している場合、一概にいいことばかりではないかもしれません。一社への依存度が高すぎると取引を打ち切られたときのリスクは大きいですし、単価が抑えられる傾向があります。コバンザメのように下請けでビジネスを行う場合も、切られない関係を築くことと、自己を抑え、足りたるを知る精神を持たねばやっていけないことでしょう。顧客別の取引高と利益率管理はほとんどの会社で行われていますので、おわかりのことと思います。
④商品構成の変化による粗利益の低下
販売戦略と利益計画の整合性が重要です。どの商品をどれだけ売っていくらの利益を会社として確保したいのか、行き当たりばったりでなく常に注意しましょう。商品別に利益をいくら生んでくれるのかを分析することも大切です。「言うは易し、行うは難し」ですね。でも、こうした計画があるかないかは行動に大きく影響します。また、実際、実行した結果うまくいかないのであれば、その反省材料を提供することにもなりますので、可能な限り、プランを立て実行、そして分析です。
⑤製造原価の上昇
製造原価にはいろいろな要素が含まれています。したがって、一概にこうすべきとは言えません。材料仕入れ単価がアップしているのであれば原因を調べて、代替が利く材料であれば他社(安価なメーカー等)から購入する等の手段を取ることも考えられます。また、製造要員の人件費が圧迫の要因であれば、省力化機械の導入や生産ライン作業のアウトソーシングもあるかもしれません。製造経費が膨らんでいるというのであれば、現場での改善活動等で削減させることも1つの方法です。
「売上営業利益率と売上経常利益率」の変化への対応策
その他の利益率
売上総利益率に続くステップは、売上営業利益率と売上経常利益率です。この2つの変化への対応策も下の図表にのせておきますので、合わせて覚えておきましょう。
<KEYWORD>
製造原価=製品を製造するために要したコスト。
アウトソーシング=外部の業者に業務を委託すること。情報通信システムの設計・運用・保守を企業外の専門業者に全面的に委託するなどが代表的。
【図表】売上総利益率をあげるには
<ここでのポイント>
素早い対応が利益率向上のカギ