今回は、会社の収益性を測る「総資本利益率」「総資本回転率」の概要について説明します。※本連載では、公認会計士・矢島雅己氏の著書『決算書はここだけ読もう[2017年版]』(弘文堂)の中から一部を抜粋し、決算書をもとに、会社の「収益性」を上げるための具体的な方法を見ていきます。

会社の収益性を維持するために必要な回転率と利益率

会社の活動に使われている資金からどれだけの利益を獲得できたか、その収益性は「総資本経常利益率」で見る、ということでしたね。

 

それでは、この総資本をどう効率的に使ったか、つまりどんな資産に使い、何回循環させて現金化していったかという総資本の効率利用率の問題と、どれだけの利益率をあげられたかという2つに分解して見てみましょう。

 

総資本利益率は、『売上経常利益率』と『総資本回転率』という比率に分解することが可能です。下の図表で、「経常利益÷売上高」を売上経常利益率といいます。売上に占める経常利益の割合で、この割合を増やせば、総資本利益率も上がることがわかります。

 

そして、「売上高÷総資本」が総資本回転率です。この数字によって、会社の総資本が何回転しているかがわかります。ここで1回転とは、投下資本が10億円とすると売上も10億円あったことを意味します。つまり、収益性=回転率(効率)×利益率です。

 

回転率を高めるか利益率を高めれば、収益性は高まります。会社の存続のためには効率的な資源の利用を図るか、価値の高いものを世に送り出すことが必要だ、ということです。

「ROE」が低い日本企業の問題とは?

自己資本利益率は英語で「Return On Equity」。略して「ROE」といいます。企業や金融市場の国際化の中で、日本企業のROEの低さが問題になっています。

 

アメリカなどは、10数%など多くは2ケタのROEがあるのに対し、日本企業は、上場企業平均で3%程度です。

 

海外からの機関投資家が日本株への投資を活発化させるにつれ、日本企業の株主軽視の経営姿勢に批判が出てきました。資本主義の世界では、株式会社の出資者こそが最終的な会社意思決定機関として、利益分配や経営者の経営姿勢に注文を出します。

 

日本はこれまで、とかく従業員や取引先を重視した経営姿勢をとってきており、活動資金の出し手である株主を軽視してきました。会社として利益を高い水準で残す、つまりROEを意識した経営を行ってこなかったわけです。

 

国際的に高い給与水準が、国際競争力を低下させる原因の1つと考えられ、必死になって企業は収益構造変革を進めています。これも、経営の視点が時代や資本主義の本質にあっていなかった証左といえるのではないでしょうか?

 

<KEYWORD>

ROE=ROE(Return On Equityの略称)自己資本利益率。税引後当期利益と株主資本の比で、株主の立場から見た企業の収益性を示す指標。

 

機関投資家=収益をあげる目的で、継続的に証券投資を行う法人その他の団体。

銀行・保険会社・投資信託・年金基金・共済組合・農業団体など。

 

総資本回転率=会社が調達している資本総額に対する売上高の割合。

 

【図表】総資本利益率のあげ方

<ここでのポイント>

収益は、利益か効率をよくすれば上がる

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