今回は、事業の「コストリダクション」と「コストコントロール」の違いについて説明します。※本連載では、公認会計士・矢島雅己氏の著書『決算書はここだけ読もう[2017年版]』(弘文堂)の中から一部を抜粋し、決算書をもとに、会社の「収益性」を上げるための具体的な方法を見ていきます。

コストリダクションのほうが効果は高いとされる

コストダウンは、実は、「コストリダクション」と「コストコントロール」の2つに分けて考えたほうがいいものです。

 

コストリダクションとは、企画設計段階からのコスト削減の取組みです。製品のスペック(仕様)、原材料、製造工程など、設計段階からすべてを見直して徹底したコストの削減を図ります。

 

多くの会社では「原価企画」という制度でこれを推進しています。このやり方は、まず開発しようとする商品の売価の目標ラインを、顧客市場分析に基づいて設定します。そこから目標利益を差し引いて「許容できる原価」を設定します。

 

その許容原価は、そのメーカーの実力からかなり達成が厳しい水準である場合が多いのですが、新技術の開発や大規模な設備投資を含めて、許容原価の達成に向けて全社をあげて取組みます。

 

部品点数を3割削減することで原価が5割落とせたとか、生産ライン方式での製造から1人ですべての組み立てを行う方式に変更したことによりムダな在庫が減らせ、結果として原価が2割改善した、などがこのコストリダクションです。企画設計段階から徹底的に見直し、原価低減を図ることを通じ競争力を獲得しようとする活動です。

 

一方、コストコントロールは、製造現場において行う原価管理です。設計や製造方法が決まった後、製造活動を通じて行われる原価低減活動です。

 

つまり、通常の生産活動の中で行うコストダウンです。

 

上記の原価企画に基づいて許容原価の達成の見通しがついた場合、各年度の「標準原価」を設定します。標準原価は、製造現場における達成目標となる原価で、品質を維持し、設備、要員を効率よく管理し、ムダをできるだけなくしていく活動を通じて、コストダウンを図っていきます。

 

コストリダクションとコストコントロールのコストダウンへの効果を比べると、前者が8割、後者が2割といわれています

「金利変動のリスク」をどのように軽減していくのか?

銀行などから借入れをすると、利息を支払わなければなりません。

 

可能であれば返済の必要のない資金で会社経営をしたいのですが、成長するにつれ、それに見合った投資をしなければならなくなります。

 

これまで通りの活動をしている限り資金に不足はないのですが、いざ、規模を一段拡大させるときに資金不足を感じるのが成長企業でしょう。

 

こんなとき株主が追加出資してくれればいいですが、それが不可能なとき、資金が不足しているので拡大のチャンスを逃すのか、銀行などから借金をしてでも資金を調達し、拡大のための投資をするか、経営者は決断を求められます。

 

しかし、過度な借入れはその後の返済がきつくなります。借入れをどのくらいするか、つまり金利負担をどの程度にするかはとても難しい問題です。金利は上がったり下がったりします。金利は自分の力では変動を操ることはできません。

 

このため、金利変動のリスクをどのように軽減していくかは財務担当者の腕の見せどころです。

 

<KEYWORD>

コストリダクション=企画設計段階からのコスト削減の取組み。

コストコントロール=製造段階での発生原価の統制。

標準原価=標準原価とは理想的な状態で製品1単位を製造するときにどれくらいの原価が発生するかをあらかじめ算出しておくもの。製品ごとに直接材料費、直接労務費、製造間接費の標準値を設けておく。

金利変動のリスク=金利が変動することに伴う危険度。

 

【図表】コストダウン

<ここでのポイント>

コストリダクションとコストコントロールの違いを理解しよう

決算書はここだけ読もう [2017年版]

決算書はここだけ読もう [2017年版]

矢島 雅己

弘文堂

わかりやすいだけでなく「ビジネスに使える」「投資に役立つ」と高い評価を得ている定番書籍、待望の新年度版。 貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CS)の読むべき項目、読み方、見方、考え方を徹底的に…

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