今回は、会社の収益性を計る「総資本利益率」と「自己資本利益率」について見ていきます。※本連載では、公認会計士・矢島雅己氏の著書『決算書はここだけ読もう[2017年版]』(弘文堂)の中から一部を抜粋し、決算書をもとに、会社の「収益性」を上げるための具体的な方法を見ていきます。

総資本利益率=経常利益÷総資本×100

総資本利益率という場合の利益とは、通常、経常利益のことです。

 

なぜでしょう?

 

それは会社の収益力を計るには、「通常の状態で会社がいくらの利益をあげることができるのか」という観点で見る必要があるからです。

 

一方、経常利益と対比されるべき資本を総資本で見ることには、どのような意味があるのでしょうか?

 

総資本は会社経営に投下されているすべての資本を意味します。

 

いうまでもなく、会社経営に投下される総資本には、銀行などから借りてきた他人資本(負債)と、株主から出資された自己資本(純資産)があります。これを合わせて、会社はお金を営業活動に投下しています。

 

総資本利益率は、経営に投下された総資本がいかに効率よく運用され、利益を稼いだかを意味します。

 

企業の総資本経常利益率の平均は上場企業で2%、製造業は3%弱です。中小企業を含めると5%が平均的数値です。経営状態が良好な優良企業は、10%を越えます。

自己資本利益率=当期利益÷自己資本×100

自己資本(純資産)というのは、株主の持分です。

 

資本金ももちろん株主の持分ですが、それ以外に、過去の儲けの蓄積である剰余金も株主の持分です。

 

株主の持分である自己資本(純資産)に対して比率をとるべき利益とは、何でしょうか?

 

通常、自己資本利益率を計算する場合は、当期利益を使います。当期利益というのは、経常利益から特別損益を加減して税引前利益を求め、さらにそこから法人税および住民税を差し引いた、税引後利益のことです。

 

総資本利益率は経常利益を用いましたが、自己資本利益率は当期利益を用います。

 

なぜでしょう?

 

ポイントは比率の持つ意味にあります。総資本利益率は、会社として投下したすべての資本(総資本)から、会社が通常の活動でどれだけの利益を稼げるか、見るものでした。よって、そこでの利益には経常利益が使われました。

 

自己資本利益率は、株主持分に対して、どれだけの見返りがあるかを見るものです。株主にとっては、税引後の利益こそ、株主持分増加に該当する部分です。ですから、自己資本利益率は当期利益を用いて算定する必要があるのです。

 

<KEYWORD>

総資本経常利益率=ROA(ReturnonAssetsの略称)ともいう。経常利益を総資本(総資産)で除した、総合的な収益性の指標。

 

経常利益=営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いた利益。

 

自己資本利益率=ROE(ReturnonEquityの略称)のこと。最終的な利益額を自己資本(純資産)の金額で除した割合を示すもの。

 

株主持分=株主の権利としての持分。

 

【図表】総資本経常利益率と自己資本当期利益率

 

<ここでのポイント>

総資本利益率は経常利益を、自己資本利益率は当期利益を使う理由を理解しよう

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