総資本利益率=経常利益÷総資本×100
総資本利益率という場合の利益とは、通常、経常利益のことです。
なぜでしょう?
それは会社の収益力を計るには、「通常の状態で会社がいくらの利益をあげることができるのか」という観点で見る必要があるからです。
一方、経常利益と対比されるべき資本を総資本で見ることには、どのような意味があるのでしょうか?
総資本は会社経営に投下されているすべての資本を意味します。
いうまでもなく、会社経営に投下される総資本には、銀行などから借りてきた他人資本(負債)と、株主から出資された自己資本(純資産)があります。これを合わせて、会社はお金を営業活動に投下しています。
総資本利益率は、経営に投下された総資本がいかに効率よく運用され、利益を稼いだかを意味します。
企業の総資本経常利益率の平均は上場企業で2%、製造業は3%弱です。中小企業を含めると5%が平均的数値です。経営状態が良好な優良企業は、10%を越えます。
自己資本利益率=当期利益÷自己資本×100
自己資本(純資産)というのは、株主の持分です。
資本金ももちろん株主の持分ですが、それ以外に、過去の儲けの蓄積である剰余金も株主の持分です。
株主の持分である自己資本(純資産)に対して比率をとるべき利益とは、何でしょうか?
通常、自己資本利益率を計算する場合は、当期利益を使います。当期利益というのは、経常利益から特別損益を加減して税引前利益を求め、さらにそこから法人税および住民税を差し引いた、税引後利益のことです。
総資本利益率は経常利益を用いましたが、自己資本利益率は当期利益を用います。
なぜでしょう?
ポイントは比率の持つ意味にあります。総資本利益率は、会社として投下したすべての資本(総資本)から、会社が通常の活動でどれだけの利益を稼げるか、見るものでした。よって、そこでの利益には経常利益が使われました。
自己資本利益率は、株主持分に対して、どれだけの見返りがあるかを見るものです。株主にとっては、税引後の利益こそ、株主持分増加に該当する部分です。ですから、自己資本利益率は当期利益を用いて算定する必要があるのです。
<KEYWORD>
総資本経常利益率=ROA(ReturnonAssetsの略称)ともいう。経常利益を総資本(総資産)で除した、総合的な収益性の指標。
経常利益=営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いた利益。
自己資本利益率=ROE(ReturnonEquityの略称)のこと。最終的な利益額を自己資本(純資産)の金額で除した割合を示すもの。
株主持分=株主の権利としての持分。
【図表】総資本経常利益率と自己資本当期利益率
<ここでのポイント>
総資本利益率は経常利益を、自己資本利益率は当期利益を使う理由を理解しよう