いい加減大人になれよ…若い世代からも強まる氷河期世代へのバッシング。ロスジェネ世代の〈最大の不幸〉とは?

いい加減大人になれよ…若い世代からも強まる氷河期世代へのバッシング。ロスジェネ世代の〈最大の不幸〉とは?
(※写真はイメージです/PIXTA)

1970年から1982年前後に生まれ、1990年代後半から2000年代にかけて高校や大学を卒業して就職を迎えた「就職氷河期世代」あるいは「ロスジェネ世代」。彼らはバブル崩壊後の「時代の不遇」を一身に受けてきました。最近では、社会的支援や救済を求める彼らに対して「いつまでも要求ばかり」「いい加減大人になれ」と言った批判が社会のあちこちからあがり始めています。本記事では、御田寺圭氏の著書『フォールン・ブリッジ』(徳間書店)より一部抜粋・再編集し、就職氷河期世代について、解説します。

かれらは「大人になることを拒否した」のではない

冒頭でも述べたとおり、昨今の世の中では、就職氷河期世代の「幼さ」「社会的責任感の希薄さ」に対する批判が起こり始めている。

 

だが、ここではっきり断っておかなければならないのは、かれらは「大人になるのを拒否した」のではなくて「大人になる機会を与えてもらえなかった」のである。ゆえに、かれらの「幼さ」をピーターパン症候群とか青い鳥症候群などと呼び蔑さげすむことは妥当ではない。

 

人間は年を重ねれば自動的に「大人」になるわけではない。社会が相応のステップと役割を用意しなければ、だれだって「肉体的には大人だが、精神的には子どものまま」になる。たまたまそのような時代の不運に遭遇してしまったかどうかの違いでしかない。

 

1970年から1982年ごろに生まれただけの人びとを「永遠の若者」にしてしまったのは、そうした社会的なステップと役割をなんの前触れもなく奪ってしまった社会の側だった。

 

日本社会は、バブル崩壊直後の不況によって生じた損失の埋め合わせのために就職氷河期世代のキャリアを犠牲に捧げ、大人になる機会をまんべんなく配ることを放棄して、そうしてなんとか失われた20年を耐え抜いた。そしてその後は「人口的に多く、まとまった利益が期待できるから」と、かれら就職氷河期世代に刺さる作品をつねに提供しつづけている。それはいうなれば、社会の都合で「あなた方にはぜひ、子どものままでいてほしい」と要望された結果としての「幼さ」なのだ。

 

<脚注>

*1「復刻(リメイク)」:

漫画『SLAMDUNK』(1990~1996年に連載)が映画『THEFIRSTSLUMDUNK』(2022年公開。2024年再上映)。

漫画『るろうに剣心』(1994~1999年に連載)が再アニメ化『るろうに剣心─明治健脚浪漫譚─京都動乱』(2023年放映。2024年10月、2期スタート)。

漫画『魔法騎士レイアース』(1993~1995年)は2024年に新アニメ化プロジェクトを始動。

RPG『FINALFANTASYⅦ』(1997年発売)が『FINALFANTASYⅦREMAKE』として2020年発売。

同『ドラゴンクエストⅢそして伝説へ…』(1988年発売)のリメイク版が2024年11月発売予定。

 

 

御田寺 圭

文筆家

フォールン・ブリッジ

フォールン・ブリッジ

御田寺 圭

徳間書店

情報技術の発達とともに、だれもが手軽に 「つながり」を得られる時代になった。 スマートフォンの画面を覗いてみれば、 一人ひとりがいまなにをしていて、 なにを考えているのかが、 いままで以上に見えるようになった…

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