(※写真はイメージです/PIXTA)

「孫のために資産を使いたい」と願う人が活用できる「教育資金の贈与」に関する制度。非課税枠は、受贈者(資産を贈られる人)1人あたり1,500万円の枠が与えられ、贈与税が掛からずに孫にお金を贈ることができる制度です。しかし、本制度を利用して後悔するケースもあって……。本記事では、安達さん夫婦(仮名)の事例とともに、教育資金の一括贈与の注意点についてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

「申し上げにくいのですが…」

そこで考えたのが、孫たちに一括贈与した資金の残額です。口座のなかには3,500万円ほど残っています。一度は贈与したお金ですが、孫たちのうち1人は大学に進学せずに就職し、あとの2人もそこまでの費用は掛からないだろうと考えられていました。

 

子供たちと協議した結果、贈与した資金を戻すことに決めた安達さん夫婦は、金融機関に相談しました。

 

しかし、裕子さんが金融機関で口座から引き出そうとしたところ、なぜかお金を下ろすことができません。驚いた裕子さんは、金融機関の担当者に尋ねたところ、「申し上げにくいのですが、お金は孫たちの財産になっているため、ご本人であっても引き出すことはできません」という回答がありました。

 

結局住宅のリフォーム資金は「教育資金を贈与してもらったのだから」と同居している長男がローンを組むことで資金を残すことができましたが、原則として孫たちが30歳になるまでは解約することができず、さらに30歳になって残った金額に対しては贈与税が発生することがわかります。

 

「あのとき安易に贈与などしなければよかった……」安達さんは当時を思い出しながらつぶやくのでした。

教育資金の贈与の特例

今回紹介した安達さんのように、「贈与税が掛からずお得」と、この制度を利用する方も少なくありません。教育資金を一括で非課税で贈与できる点はメリットで、相続税ができるだけ掛からないようにと考える方や、安達さんのように孫の教育費を援助したいと考える方は、活用を検討されるとよい制度といえます。

 

しかし、その一方で契約の終了時(孫が30歳に達したときなど)までに1,500万円を使い切れなかったら、残った分は祖父母からの贈与となり、孫は贈与税を払わなければなりません。また、祖父母が病気などになり「医療費が必要になったので、口座を解約したい」と思っても解約することはできません。

 

また、教育費を孫に贈与する場合にはこの制度を使わずとも、必要になったらその都度贈与を行うことで贈与税は課税されずに教育資金を贈与することが可能で、安達さんはこの制度を利用せずともその都度必要な資金を非課税で援助することができたのです。

 

一括で渡すことができるという点がメリットではありますが、引き出す際には教育費として支払った領収書などの添付が必要だったり、残額に対して贈与税が発生したりとデメリットもあります。

 

本制度を利用すべきかどうか、また、1,500万円全額を贈与せずとも500万円、1,000万円などの金額で与することも可能ですので、30歳までに使い切る予定がある金額かなど、検討してから利用するようにしましょう。

 

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