老人ホームの状況
スタッフは明らかに不足しており、疲弊しています。当然ケアの質は落ちるし、設備の老朽化も目立ちます。ところどころ、灯りが取り換えられないまま放置されているところも。掃除が行き届いているとはとてもいえません。
ハナコさんは体調を崩していましたが、適切な対応がされているとは思えませんでした。「こんなひどい環境で母を1ヵ月も我慢させていたなんて」クミさんはすすり泣きます。
多くの人は、老人ホームが安全で快適な環境であることをイメージするかもしれません。すべてが整った環境ではない現実を目の当たりにし、クミさんは大きなショックを受けました。このような問題は、少子高齢化が進む昨今において、多くの方にとって他人事ではありません。いずれ自分が直面する可能性のある問題でもあるのです。
介護施設の課題と現実
総務省 統計局の調査によると、2024年の時点で3,000万人以上の高齢者が存在します。そしてそのなかでも、介護が必要な人の数は増加傾向にあります。しかし、施設の数は追いついておらず、老人ホームに入居したくてもできない「待機老人」が多数いるのが現状です。
現存する施設でもスタッフの数が足りておらず、細やかな対応は難易度が増すばかり。必然的に、老人ホームの費用も年々上昇します。介護付き老人ホームであれば15万円~30万円程度の月額費用に加え、数百万円の入居一時金がかかるケースもあります。
ハナコさんも老人ホームに入ることをかねてから意識していましたが、この費用の高額さにしり込みしてしまい、入居の決断が遅れた背景があります。
同じように考える高齢者も当然、少なくありません。物価の高騰も嘆かれるなか、年金だけでは賄いきれないケースも多く存在します。このうえ、精神的なサポートも難しくなれば、入居者であるハナコさんの「もう、ダメ」という悲痛な言葉も多大な不安が込められたものと推察ができます。
たとえ運よく老人ホームに入居できたとしても、家族とのつながりや適切なコミュニケーションが取れなければ、高齢者は孤立感や不安を感じやすくなります。
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