●雇用統計は予想を上回る結果も、米経済は緩やかに減速し、利下げは継続との見方は変わらず。
●米雇用の底堅さの確認で、景気不安後退、米株高、ドル高・円安となり日本株の強い追い風に。
●株高の持続性の見極めには米景気に加え、目先は国内企業の中間決算での業績予想が重要。
雇用統計は予想を上回る結果も、米経済は緩やかに減速し、利下げは継続との見方は変わらず
10月4日発表された9月の米雇用統計において、非農業部門雇用者数は前月比254,000人増となり、市場予想の150,000人増を大幅に上回りました。また、7月と8月の実績が上方修正され、雇用者数は合計で72,000人増となりました。さらに、失業率は8月の4.2%から4.1%に低下し、平均時給の前年比伸び率は3.9%から4.0%に上昇するなど、今回は、米雇用情勢の底堅さを改めて確認する結果となりました。
雇用統計は月次の振れ幅の大きい経済指標ですが、雇用者数は均してみれば緩やかな減少傾向にあることが分かります(図表1)。弊社は米国経済について、現時点で巡航速度(1.8%程度)をやや上回る成長ペースにあるものの、今後は徐々に巡航速度まで減速していくと考えており、年内は11月と12月に、2025年は四半期に1度、それぞれ25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ずつ利下げが行われるとの見方を維持しています。
米雇用の底堅さの確認で、景気不安後退、米株高、ドル高・円安となり日本株の強い追い風に
雇用統計発表後の米金融市場は、長期金利上昇、ドル高、株高で反応、週明けの日経平均株価はこの流れを引き継いで上昇し、午前の取引で一時39,500円台をつける場面もみられました。今回の雇用統計で、①米景気の先行き不安が和らぎ、②ダウ工業株30種平均が最高値を更新するなど、米主要株価指数が堅調に推移し、③米大幅利下げの織り込みの後退により、ドル高・円安が進んだことは、日本株にとって強い追い風です。
一方、フェデラルファンド(FF)金利先物市場に目を向けると、10月1日時点でFF金利は2025年末にかけて3%を割り込む動きが見込まれており、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーが「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」で示すFF金利の適正水準(中央値)を大きく下回っていました(図表2)。ただ、今回の雇用統計を受け、10月4日には2025年の大幅利下げの織り込みが一気に修正され、これがドル高・円安の一因となりました。
株高の持続性の見極めには米景気に加え、目先は国内企業の中間決算での業績予想が重要
なお、9月26日に米国に上陸したハリケーンや米港湾でのストライキの影響は、10月の雇用統計にあらわれる見通しで、10月分はいったん雇用の悪化も予想されますが、理由が明確である以上、市場のネガティブな反応は限定的とも考えられます。この先も、引き続き雇用を中心とする米経済指標の見極めは必要で、仮に指標の悪化が目立つようになれば、前述の①から③の動きが逆転し、日本株には強い向かい風となる恐れがあります。
国内では10月下旬から3月期決算企業の中間決算が本格化します。東証株価指数(TOPIX)を構成する主要3月期決算企業による今年度の業績予想は、8月14日時点で、売上高が前年度比+3.1%、営業利益は同+4.3%、経常利益は同-3.9%、純利益は同-3.3%となっています。今般、業績予想を上方修正する動きが顕著となれば、株高の持続性は高まると思われるため、中間決算への注目が集まります。
(2024年10月7日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『“予想以上”の9月米雇用統計を受けて日本株上昇も…「株高の持続性」を見極める【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト