(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●直近でパウエル議長は利下げを急ぐ必要なし、植田総裁は政策判断の時間は十分ありと述べた。

●さらに、予想を上回る米雇用指標と石破首相発言で、ドル安・円高の流れはドル高・円安に反転。

●焦点は日米経済動向と、それに関する金融当局判断、ドル円は当面レンジ内で新規材料待ちか。

直近でパウエル議長は利下げを急ぐ必要なし、植田総裁は政策判断の時間は十分ありと述べた

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は9月30日の講演で、「経済がおおむね予想通りに進展すれば、金融政策はより中立的なスタンスへと時間をかけて移行していく」と述べ、「政策判断は会合ごとに行う」という従来の見解を繰り返しました。また、「全体として経済は堅調な状態にあり、それを保つために政策手段を活用する」とし、利下げを「急ぐ必要はない」と改めて強調しました。

 

一方、石破茂首相と日銀の植田和男総裁は10月2日に初めて会談を行いました。植田総裁は会談後、記者団に対し、「金融政策について極めて緩和的な状態でしっかり経済を支えていく状態にあること」、「見通し通りに経済が動いていけば金融緩和の度合いを調整していくことになるが、本当にそうかどうかを見極めるための時間は十分あると考えていて、丁寧にみていきたい」と述べ、この2点を石破首相に伝えたことを明らかにしました。

さらに、予想を上回る米雇用指標と石破首相発言で、ドル安・円高の流れはドル高・円安に反転

9月27日の自民党総裁選挙で、金利のある世界を肯定していた石破氏が勝利すると、早期利上げへの警戒などから一気にドル安・円高が進みましたが、9月30日以降、ドル高・円安に転じています(図表1)。背景には、前述の通り、利下げを急がないとするFRBと利上げ判断に十分な時間があるとする日銀の姿勢が改めて確認されたことや、米雇用指標が市場予想を上回ったこと、以下の石破首相発言が材料視されたことなどがあると思われます。

 

[図表1]9月27日以降のドル円レート

 

石破首相は10月1日の首相就任後の記者会見で、「金融緩和の基本的基調は維持されるものと期待し、見守っている」と述べ、2日の植田総裁との会談後、記者団に「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と発言しました。なお、石破首相は両日とも日銀の独立性は尊重する立場を改めて示しており、総裁選後の円急騰などの市場動向を踏まえ、金融政策の考えについて早々に丁寧な説明を行ったことになります。

焦点は日米経済動向と、それに関する金融当局判断、ドル円は当面レンジ内で新規材料待ちか

ただ、市場の観点からすると、「期待」や「個人的」見解であっても、首相が金融政策の方向性に言及することは相場の波乱要因になりかねず、発言する場合は「日銀と密に連携する」、「日銀の独立性を尊重する」にとどめ、市場が日銀からの情報発信に注目できるようにした方が好ましいと考えます。この場合、ドル円の方向性は、日米経済動向と、それが見通し通りかについてのFRBと日銀の判断に、大きく影響を受けることになると考えます。

 

日米とも見通し通りに経済が進展すれば、FRBの大幅利下げ観測後退がドル高要因、日銀の利上げ観測浮上が円高要因となり、ドル円は比較的安定した動きが見込まれます。一方、経済が見通しをやや下回っても、ドル安、円安となり、それほど大幅にドル安・円高が進まないことも考えられます。そのため、ドル円は当面、2021年以降の下値支持線に支えられ(図表2)、おおむね140円~150円のレンジ内で新規材料を待つ流れも想定されます。

 

[図表2]2021年から続くドル高・円安のトレンドライン

 

(2024年10月4日)

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『パウエル議長&植田総裁「政策判断を急がない」⇒ドル円は当面「おおむね140円~150円」で“新規材料待ち”か【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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