●自民党と公明党は与党で過半数を衆院選の目標に、今回はこの目標達成の成否が1つの焦点。
●与党の議席数増で株高、減少でも絶対安定多数維持なら影響軽微、安定多数未達で株安も。
●それでも過半数なら目標達成で株安は一時的、過半数割れは大幅安、新政権の政策見極めへ。
自民党と公明党は与党で過半数を衆院選の目標に、今回はこの目標達成の成否が1つの焦点
第50回衆議院議員総選挙が10月15日に公示され、10月27日の投開票に向けて12日間の選挙戦に入りました。小選挙区289、比例代表176の総定数465議席を巡る争いとなりますが、野党の候補一本化が進まず、与野党が事実上一対一で対決する「一騎打ち」は小選挙区の2割に満たない状況です。与党の自由民主党(以下、自民党)と公明党は「与党で過半数」を目標に据えており、今回は、この目標達成の成否が1つの焦点となります。
なお、公示時点の議席数は、自民党247、立憲民主党98、日本維新の会44、公明党32、日本共産党10、国民民主党7などであり、自民、公明両党の議席数は279でした。選挙の結果、これらの議席数がどのように変化するかが注目されますが、今回のレポートでは、想定され得る与党の獲得議席数をいくつかのシナリオに分け、日経平均株価がどのように反応するかを考えてみます(図表)。
与党の議席数増で株高、減少でも絶対安定多数維持なら影響軽微、安定多数未達で株安も
まず、与党が279議席から議席数を増やし、「3分の2」の310議席以上を確保した場合、石破政権の長期安定期待から、日経平均は大幅高が見込まれますが、議席数がそこまで至らずとも、279議席からいくらか増えれば、政局の不透明感が払拭され、株高の反応が予想されます。また、与党が議席数を減らしても、「絶対安定多数」の261議席以上を維持できれば、石破首相の求心力に大きく影響することはなく、日経平均の反応も限定的と思われます。
なお、自民党は今回、247議席から大きく議席を減らし、衆議院定数465の過半数にあたる233議席に届かない可能性が複数の報道で指摘されており、一部で50議席程度減る見通しが報じられています。与党の議席数が「安定多数」の244議席を下回った場合、自民党の議席数が焦点になります。自民党が大幅に議席数を減らし、石破首相の求心力低下と政権安定への懸念が強まれば、日経平均はいったん下落の動きも予想されます。
それでも過半数なら目標達成で株安は一時的、過半数割れは大幅安、新政権の政策見極めへ
ただ、与党の議席数が安定多数割れとなっても、「過半数」を維持できれば、与党の目標は達成されたことになります。与党は2025年夏の参議院選挙を強く意識し、大規模な補正予算を計上し、大型の経済対策を打ち出すことも想定されるため、日経平均は下げたとしても一時的の可能性が高いと考えられます。仮に、与党が議席数を一段と減らし、過半数の233議席を失った場合、野党も過半数未達なら、連立を模索する展開となります。
一方、野党が過半数の議席を獲得すれば、政権交代となりますが、参議院では与党が過半数の議席を占めているため、ねじれ国会となります。このように、与党が過半数割れとなれば、政局の不透明感がかなり強まり、日経平均株価は大幅安となる恐れがあります。ただ、政権交代となっても、新政権による安定した政策運営を見通すことができれば、日経平均は次第に落ち着きを取り戻すと思われます。
(2024年10月21日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『自民・公明の議席「過半数割れ」なら“大幅安”の恐れも 衆院選後の日経平均株価【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト