日銀当座預金の総額を増減させる財政等要因③「国債等」

今回は、日銀当座預金の総額を増減する財政等要因のうち「国債等」について見ていきます。※本連載では、専修大学経営学部の佐々木浩二准教授による著書『ファイナンス ―資金の流れから経済を読み解く―』(創成社、2016年)の中から一部を抜粋し、日本銀行の機能のひとつである「金融調整」について、その概要を解説します。

日銀当座預金を大幅に減らしている国債

図表1は公債の発行と償還によって生じる日銀当座預金の増減を表しています。政府が国債や国庫短期証券を発行するとき,買い手である民間から政府へ資金が流れます。この資金の決済は日銀当座預金を減らし,政府預金を増やして済ませます。したがって,公債の発行は日銀当座預金の減少要因です。政府が国債や国庫短期証券を償還するとき,政府から保有主体である民間へ資金が流れます。この資金の決済は政府預金を減らし,日銀当座預金を増やして済ませます。したがって公債の償還は日銀当座預金の増加要因です。

 

1990年のようすを表す左図をみると,発行と償還のバランスがよいことに気づきます。年累計では日銀当座預金を5兆円減らしました。2014年のようすを表す右図をみると,毎月発行が償還を上回っていることに気づきます。年累計では日銀当座預金を147兆円減らしました。国庫短期証券で資金繰りをする厳しい財政状況が映し出されています。

 

図表1 公債(1)

1990年に比べて激しくなった「財政等要因」による増減

図表2は一般財政(一般会計),一般財政(特別会計),公債にその他要因を加えた財政等要因の全容を表しています。1990年のようすを表す左図をみると,中央政府から民間への資金散布は一般会計の歳入でまかなわれていることがわかります。2014年のようすを表す右図をみると,年を通じて国債が資金不足をもたらしていることがわかります。2014年は1990年に比べて財政等要因による日銀当座預金の増減が激しくなっています。

 

図表2 財政等要因(2)

(1) 日本銀行,財政関連統計,財政資金収支,対民間収支からデータを取得し作成。日本行の国債保有の影響については書籍『ファイナンス ―資金の流れから経済を読み解く―』(創成社、2016年)第7章参照。

(2) 日本銀行,財政関連統計,財政資金収支,対民間収支からデータを取得し作成。国債等は,財政資金対民間収支純額から一般会計と特別会計の純額を減じて求めた。対民収支の季節性については鎌田(2006),高野(2006),高野(2007)を参照。財政等要因による変動縮減に向けた取り組みについては財務省,国庫金の効率的な管理について(平成17年8月26日),財務省,国庫金の効率的な管理の強化について(平成18年5月24日)を参照。

 

参考文献

・我孫子善一郎『我が国の国庫制度―対民収支編―』ファイナンス,18-31,2006年。

・大内聡『我が国の国庫制度について―入門編―』ファイナンス,42-62,2005年。

・鎌田修『我が国の国庫制度―補足編―』ファイナンス,22-29,2006年。

・香西泰・伊藤修・有岡律子『バブル期の金融政策とその反省』金融研究,217-260,2000年。

・資産価格変動のメカニズムとその経済効果に関する研究会『資産価格変動のメカニズムとその経済効果』フィナンシャル・レビュー,30, 1-75,1993年。

・下鶴毅『我が国の国庫制度―出納計理編―』ファイナンス,22-39,2005年。

・高野寿也『我が国の国庫制度―応用編―』ファイナンス,11-16,2006年。

・高野寿也『国庫キャッシュマネジメント改革』ファイナンス,9-15,2007年。

・日本銀行『決済システムレポート2012-2013』2013年。

・日本銀行企画室『「マネタリーベースと日本銀行の取引」統計について』2000年。

・日本銀行企画室『日本銀行の政策・業務とバランスシート』2004年。

・日本銀行財政収支研究会『新版財政収支のみかた―わが国の国庫制度と財政資金の動き―』ときわ総合サービス,1997年。

・渡部晶『わが国の通貨制度(幣制)の運用状況について』ファイナンス,18-31,2012年。

・Keynes, John Maynard著,小泉明・長澤惟恭訳『貨幣論Ⅰ 貨幣の純粋理論』ケインズ全集第5巻,東洋経済新報社,2001年。

・Keynes, John Maynard著,長澤惟恭訳『貨幣論Ⅱ 貨幣の応用理論』ケインズ全集第6巻,東洋経済新報社,2001年。

あなたにオススメのセミナー

    専修大学経営学部 准教授

    学位
    School of Economics, Mathematics and Statistics, Birkbeck College, University of London, Doctor of Philosophy

    職歴等
    日本銀行金融研究所客員研究生、労働政策研究・研修機構アシスタントフェロー、大東文化大学経済学部講師などを経て現職。

    著作
    『ファイナンス―資金の流れから経済を読み解く―』(創成社, 2016年)、
    『マクロ経済分析―ケインズの経済学―』(創成社, 2016年)、
    “Financial Innovation” (大阪証券取引所先物・オプションレポート, 2011年12月号)、
    “Proprietary Trading Losses in Banks: Do Banks Sufficiently Invest in Control?”(with Norvald Instefjord, in Annals of Finance, 3, 3, 329-350, 2007年)などがある。

    著者紹介

    連載大人のたしなみ経済学――日銀による「金融調節」の概要

    ファイナンス ―資金の流れから経済を読み解く―

    ファイナンス ―資金の流れから経済を読み解く―

    佐々木 浩二

    創成社

    本書は、ケインズ『貨幣論』とバーリ=ミーンズ『現代株式会社と私有財産』を縦糸に、近年の制度とデータを横糸に、やさしい言葉で編んだ書籍です。 次のような疑問や知りたいことがある人にお勧めします。 ・たんす預金は…

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