12ヵ月後の株価は「上昇」でも、途中は下がる場合も
ただし、利下げ開始12ヵ月後におけるリターンがプラスだった12回をみると、利下げ開始後6ヵ月や9ヵ月あたりにかけて、株価が下がる場合があることが観察できます。
なぜなら、そもそも、全14回の利下げ後12ヵ月間のうちに、9回は景気後退が生じているためです。プラス、1回は利下げ開始後14ヵ月目から景気後退に入り、数ヵ月間、株価はいくぶん調整しています。
逆に言えば、今後の気持ちの持ち方(2回を除けば、12ヵ月後にはプラスになっているため)「景気後退は恐るるに足らず」ということかもしれません。
今後の対処方法……2回を除けば、下落の期間は半年から9ヵ月程度に留まるため、「景気後退による下落は『残された、限定的な機会』と捉え、積み立て投資で安値を拾う準備を進める」ということかもしれません。
[図表4]は、全14回の米国の利下げ期におけるS&P500指数(価格リターン、月中平均値)の軌道を、「景気後退入りしたとき」と「景気後退入りしなかったとき」に色分けしたものです。株価の挙動をイメージしておかれてください。
簡単に言えば、直観のとおり、「景気後退入りしなかったとき」のほうが、「景気後退入りしたとき」に比べて、株価は高く、安定的に推移するようにみえます。
いまはもう「景気後退」なのか
景気後退のテクニカルな基準は「2四半期連続のマイナス成長」です。ただし、過去をみると、「景気後退はおもに失業率が上昇しているとき」です。失業者の割合が増えているわけですから、景気後退と判定されるのも自然です。
「現在、失業率は上昇中」ですから、「すでにわれわれは景気後退のなかにいて、いまから数年後になって、全米経済研究所(NBER)が『景気後退は、2024年半ばから始まっていた』と判定する」可能性も考えられます。
「いまが景気後退?」と疑問に思われるかもしれません。
たとえば、アトランタ連銀のリアルタイムGDP予測「GDPNow」によれば、7-9月期の実質GDP成長率は+2.9%であり、FRBが考える潜在成長率(1.8%)を大きく上回って推移しています。
逆に言えば、①景気後退がこの程度で済むのであれば、あるいは、②ここからやや雇用が減るなどする浅い景気後退に留まるならば、やはり「恐るるに足らず」かもしれません。
いずれにせよ、前節で確認したように、株価は景気後退の場合でも長期では上昇する場合が多いわけですから、冷静な判断が必要でしょう。