(※写真はイメージです/PIXTA)

利下げに舵を切った米国。この決定は景気と株価にどのような影響をもたらすのか……また、私たちはどのような投資行動が求められるのか。フィデリティ・インスティテュート主席研究員でマクロストラテジストの重見吉徳氏が、過去のデータを紐解きながら考察します。

「利下げ後の米景気と株価」今までの動向とポイント

9月17日から18日にかけて米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれ、0.5%の利下げが決定されました。

 

このほか、年内に追加で0.5%、来年2025年に1%、再来年2026年に0.5%の利下げを実施した上で、政策金利を中立水準付近(2.9%)に誘導する見通しを示しました。

 

利下げは、経済に存在するすべてのパーティーを「救済」します。

 

現在の米国で言えば、これから住宅を買おうとしている家計、すでに高いクレジットカード・ローン金利を課されている家計、設備投資や運転資金が必要な企業、低稼働率のオフィス不動産を保有する主体、保有債券に巨額の含み損を抱える商業銀行、債務・GDP比が第2次大戦時並みである中央政府、そして、債務超過状態にあるFRB自身もそうです。

 

今後、いくぶんの景気鈍化や景気後退があったとしても、中期的には景気が強くなっていく絵や、それを先読みするように株価が上がっていく絵をイメージしておくのがよいでしょう。

 

まず、最初に投資家に関わりがある「利下げ後の米景気と株価」についてまとめます。

 

第2次大戦以降の米利下げ時のS&P500

[図表1]は、第2次世界大戦が勃発した1939年以降の、合計14回の米国の利下げ期におけるS&P500指数の平均リターンを示しています(価格指数の月中平均値を使用)。

 

[図表1]米利下げ後のS&P500のリターン
[図表1]米利下げ後のS&P500のリターン

 

主要な観察点を述べると、 利下げ開始12ヵ月後、24ヵ月後、36ヵ月後におけるリターンの平均値は、約11%、27%、35%のプラス(上昇)でした。

 

大変望ましい結果です。

 

ただし、①あくまで平均値ですし、②24ヵ月後や36ヵ月後となると、次の利下げ局面と重なる(=データが互いに重複している)場合もある点に注意が必要です。

 

そこで、次に、利下げ開始から12ヵ月間における株価の軌道なども確認してみます。

 

[図表2]は、第2次世界大戦が勃発した1939年以降の、合計14回の米国の利下げ期におけるS&P500指数(価格リターン、月中平均値)の全軌道と平均値を示しています。

 

[図表2]米利下げ開始前後のS&P500のリターン
[図表2]米利下げ開始前後のS&P500のリターン


主要な観察点を述べると、[図表1]でも示したとおり、利下げ開始12ヵ月後におけるリターンの平均値は、約11%のプラス(上昇)でした。また、利下げ開始12ヵ月後におけるリターンは、全14回中12回がプラスでした。リターンがマイナスだった2回は、ITバブル崩壊後と世界金融危機時です。

 

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