●アベノミクス継承の高市氏、改革推進の小泉氏、岸田政策を引き継ぐ石破氏が有力との報道も。
●財政は高市氏と小泉氏が積極財政の立場で、日銀の政策は小泉氏と石破氏が独立性を尊重。
●市場がリスクオンで反応しやすい主張は、高市氏、小泉氏、石破氏の順か、午後の動きに要注目。
アベノミクス継承の高市氏、改革推進の小泉氏、岸田政策を引き継ぐ石破氏が有力との報道も
自民党総裁選挙は9月26日に党員投票が締め切られ、27日13時より自民党本部において党員投票の開票と、議員投票および開票が行われます。今回は、推薦人制度が導入された1972年以降で最多の9人が立候補し、これまで経済政策などを巡り論戦が交わされてきました。報道によると、混戦のため1回目の投票では決着がつかず、上位2人が決選投票に進むのは確実な情勢の模様です。
また、高市氏、小泉氏、石破氏が激しく争う展開と報じられていることから、以下、改めて3氏の主な政策と主張を比較し(図表)、市場への影響について考えます。まず、経済政策について、高市氏はアベノミクスを継承し、危機管理や成長分野への投資を訴えています。小泉氏は、政治改革、規制改革、働き方などの選択肢拡大を1年以内に実施するとしています。石破氏は、岸田政権の政策を引き継ぎ、地方創生も政策の柱に据えています。
財政は高市氏と小泉氏が積極財政の立場で、日銀の政策は小泉氏と石破氏が独立性を尊重
次に、財政運営について、高市氏は積極財政の方針で、小泉氏も首相に就任すれば、直ちに財政出動を伴う物価高対策を指示すると述べています。一方、石破氏は財政再建重視の姿勢で、負担能力のある企業と人に負担してもらう考えを示しています。日銀の金融政策に関し、高市氏は追加利上げをけん制する発言をしていますが、小泉氏と石破氏は日銀の独立性を尊重するとしています。
なお、小泉氏の規制改革に含まれる解雇規制の見直しについて、高市氏と石破氏は慎重な立場であり、石破氏が意欲を示す金融所得課税の強化について、小泉氏は否定的な見解を示しています。そして、衆院解散・総選挙に関し、早期実施を主張しているのが小泉氏ですが、高市氏も2024年度補正予算案の編成前に解散する可能性に触れており、石破氏も国民に判断材料を提供すべきとしつつも、なるべく早期に信を問うのも当然との考えです。
市場がリスクオンで反応しやすい主張は、高市氏、小泉氏、石破氏の順か、午後の動きに要注目
以上より、高市氏は「積極財政+金融緩和継続」、小泉氏は「積極財政+緩和修正容認」、石破氏は「財政再建+緩和修正容認」のスタンスと思われ、市場がリスクオン(選好)で反応する可能性が高い政策主張は、高市氏、小泉氏、石破氏の順になると考えられます。ただ、一般に、物価の上昇が続くなかでの積極財政と金融緩和は、通貨安とさらなる物価高につながる恐れもあるため、慎重な政策判断が求められます。
このほか、安易な雇用規制の緩和は、労働者の不安を招き、消費への影響も懸念され、また、金融所得課税の強化は、貯蓄から投資の流れに水を差すことにもなりかねないため、それぞれ十分な議論が必要と思われます。新総裁は、決選投票となった場合、一部報道では午後3時40分頃に選出される見通しで、新総裁の記者会見は午後6時から予定されています。新総裁選出の過程で、実際に市場がどのように反応するか注目が集まります。
(2024年9月27日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『【本日投開票】自民党総裁選、金融市場が《リスクオン》で反応しやすい主張は「高市氏>小泉氏>石破氏」の順か【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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