●石破氏勝利で増税や早期利上げへの警戒が強まり、市場は長期金利上昇、円高、株安で反応。
●ただ早期増税は考えにくく日銀は従来の慎重な利上げ判断継続とみられ市場の反応は一時的か。
●市場の不安定さが続けば石破氏は財政運営と日銀の独立性尊重について丁寧な説明が必要に。
石破氏勝利で増税や早期利上げへの警戒が強まり、市場は長期金利上昇、円高、株安で反応
9月27日に投開票が行われた自民党総裁選挙では、アベノミクスの継承を掲げる高市早苗氏が得票数トップとなったことで、積極財政と金融緩和継続への期待から、国内市場は長期金利低下、円安、株高で反応しました。しかしながら、その後の決選投票で、石破茂氏が逆転勝利し、第28代総裁に選出されると、一転して長期金利と円は急騰し、日経平均先物は下落する展開となりました。
これまで石破氏は、金融所得課税の強化は「実行したい」、税負担能力のある企業には「負担をお願いしたい」、所得税は負担増の「余地がある」と発言しており、また、日銀については「独立性を尊重」するとしています。そのため、石破氏の総裁選勝利を受け、増税や早期追加利上げに対する市場の警戒が一気に強まり、長期金利上昇、円高、株安で反応したと推測されます。
ただ早期増税は考えにくく日銀は従来の慎重な利上げ判断継続とみられ市場の反応は一時的か
石破氏の主な政策と主張は図表の通りですが、石破氏は総裁選後に出演したテレビ番組で、「必要であれば財政出動する」、「民間需要が少ないときは財政出動しないと経済が持たない」と述べています。また、日銀の判断なので政府が言うことではないとしつつも、「金融緩和の方向性は維持していかなければならない」との見解を示し、「貯蓄から投資の流れをもっと加速していかなければならない」と明言しました。
そのため、石破氏が首相に指名された後、早々に増税に踏み切ることはないと思われ、日銀はこれまで通り、見通し実現の確度や、米国などの海外経済、金融資本市場の動向を見極めつつ、慎重に利上げの判断を行っていくと考えています。したがって、石破氏の総裁選勝利後の長期金利上昇、円高、株安の反応は、かなり投機色が強く、一時的なものにとどまる可能性が高いとみています。
市場の不安定さが続けば石破氏は財政運営と日銀の独立性尊重について丁寧な説明が必要に
石破氏は10月1日召集の臨時国会で首相に指名された後、直ちに組閣を行う見通しです。幹事長は森山裕総務会長(旧森山派会長)、選挙対策委員長に小泉進次郎元環境相(無派閥、菅前首相に近いとされる)を起用し、林芳正官房長官(旧岸田派)は続投とみられます。また、党副総裁に菅義偉前首相(無派閥)、党最高顧問に麻生太郎副総裁(麻生派会長)を充てる方針で、石破氏が挙党態勢の構築に動いている様子がうかがえます。
報道によれば、石破氏は4日に所信表明演説に臨み、7日からの各党代表質問を経て、9日に衆議院を解散、総選挙は15日公示、27日投開票の日程を軸に最終調整に入った模様で、解散前に党首討論も想定されるとのことです。党首討論では、政治資金問題が大きな焦点になるとみられますが、仮に市場の不安定な動きが続いた場合、石破氏は財政運営と日銀の独立性尊重の考え方についても、改めて丁寧な説明が必要になると思われます。
(2024年9月30日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『金利上昇、円高、株安…「石破ショック」は一時的なものにとどまる可能性が高い【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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