●政策据え置きは予想通り、声明も大きな変更なく市場は植田総裁の記者会見での発言に注目。
●植田総裁は、金融情勢を高い緊張感で注視し、物価リスク後退で判断に時間的余裕ありと発言。
●弊社は12月利上げを予想、市場では織り込みが進まず、日銀に市場との丁寧な対話が望まれる。
政策据え置きは予想通り、声明も大きな変更なく市場は植田総裁の記者会見での発言に注目
日銀は9月19日、20日に金融政策決定会合を開催し、無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%程度に据え置くことを決定しました。声明では、経済と物価の現状認識について、個人消費は「緩やかな増加基調にある」、足元の物価は「2%台後半」との表現に修正されただけで(前回7月は順に「底堅く推移している」、「2%台半ば」)、経済と物価の先行きの展望、およびリスク要因については、前回と同じ見解であることが確認されました。
政策据え置きは大方の予想通りで、声明の内容にも大きな変更がなかったことから、今会合の決定自体が市場に与える影響は限定的となりました。そのため、追加利上げの時期に関する手掛かりは結局、植田和男総裁の発言から探るしかなく、市場の関心は9月20日午後3時30分からの記者会見に集まりました。以下、植田総裁の発言について、ポイントを整理していきます(図表1)。
植田総裁は、金融情勢を高い緊張感で注視し、物価リスク後退で判断に時間的余裕ありと発言
植田総裁は金融政策の運営について、「現在の実質金利が極めて低い状態にあることを踏まえると、経済・物価見通しの実現に応じ、引き続き、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」旨の見解を示しました。ただ、「米国をはじめとする海外経済の先行きは引き続き不透明」で、「金融資本市場も引き続き不安定な状況にある」とし、「当面はこれらの動向を極めて高い緊張感を持って注視」すると述べました。
また、「足元の日本経済のデータは見通しに沿って推移している」ものの、世界経済の不透明感などを踏まえると、「見通しの確度が高まったので、すぐに利上げだということにはならない」と発言しました。さらに、円安による輸入物価上昇を通じた国内物価の上振れリスクは相応に減少し、「政策判断にあたっては、さまざまなことを確認していく時間的な余裕はある」との考えを明らかにしました。
弊社は12月利上げを予想、市場では織り込みが進まず、日銀に市場との丁寧な対話が望まれる
以上より、①現在、経済・物価は見通しに沿って推移、見通し実現の確度が高まれば追加利上げを実施、②ただ、海外経済の先行きは不透明で金融資本市場も不安定、これらが見通し実現の確度に及ぼす影響を見極める、③物価の上振れリスクが後退し、政策判断に時間的余裕あり、という日銀の見解が確認されました。そのため、日銀は当面利上げを急がないと思われ、短期的には円安・株高要因になると考えられます。
弊社は日銀が米景気の軟着陸(ソフトランディング)の可能性を慎重に見極め、12月に0.25%の追加利上げを行うと予想しています。なお、日銀の政策判断については、「見通し実現の確度」に、「米国など海外経済の動向」と「金融資本市場の動向」の要素が加わったことで、政策展望がやや複雑となり、市場の利上げの織り込みが進んでいないように見受けられます(図表2)。この点に関し、日銀には市場との丁寧な対話が望まれます。
(2024年9月24日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日銀9月会合、予想通り「政策据え置き」 次回利上げは「12月」と予想【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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