(※写真はイメージです/PIXTA)

患者の異変に気づいたとき、原因を確かめるために検査が必要になるケースがあります。看護師だけでできる対応には限りがあり、時間的ロスは極力減らしたいものの、人的リソースが限られている以上、すぐに医師が駆けつけられない状況も起こりうるでしょう。このような状況を解決する手段として、現在、各医療機関に推進されていることがあります。本記事では、青柳智和氏の著書『看護師2.0 逼迫する医療現場に求められる これからの看護師の役割』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部抜粋・再編集し、患者への対応フロー(プロトコール)の作成・運用によって得られるメリットについて解説します。

医療機関で「プロトコール」の作成・運用がされていると…

一方、発熱したらこういう検査をしてください、というプロトコールがあれば、それに則り看護師が検査を行うことで発熱の原因が迅速に判明し、もしそれが重篤な疾患の可能性を示すものであればすぐ医師を呼ぶことができます。

 

もちろん、発熱患者全員に一律の検査をするという意味ではありません。緊急度の高い発熱を早く見つけ治療につなげるのが目的ですから、プロトコールには発熱かつ〇〇の場合、とか、〇〇が疑われる場合、などと検査を要する条件や検査の内容が記載されています。

 

それと照らし合わせて、「あっ、この患者のこの発熱は〇〇の病気によるものかもしれない」といったように、検査が必要な患者を見抜き病気を予測し、検査で裏付けをとるプロトコールがあれば看護師はここまでできるのです。

 

そうすれば、熱がありました→バイタルサインはこうで、身体所見はこうで、採血の結果はこうで、画像検査はこうで、と医師に報告できますので、医師は診察する前にこれらの情報を把握できる分、診断や治療が迅速化できる、というメリットが得られます。

 

限られたリソースのなかで診断や治療を迅速化するために

なお、この一連の対応はプロトコールが存在していることが前提です。そしてプロトコールは病院施設ごとに作られます。

 

したがって、勤務している病院にそういうプロトコールがなければできませんが、現状、包括的指示のプロトコールをしっかり作っている医療機関はまだまだ少ないのが実状です。

 

包括的指示のプロトコールが浸透していないのですから、おのずと看護師も、包括的指示で動く経験を積むことができません。看護師の役割として昔から、包括的指示であってもプロトコールがあればそれに則り、検査もできるのです、と決まっていたにもかかわらず、現実には運用が十分にされていないということです。

 

しかしこれがあれば、患者への治療が早くなるのは明らかです。今の日本は高齢化を背景に、緊急度の高い疾患を持つ患者も増えている一方、医師のパワーは限られています。そこで看護師がプロトコールを活用して、患者の情報を先手先手で集めることが、今の日本の医療体制の中では最も、診断や治療の迅速化に貢献できると日本看護協会は考えているようです。ガイドラインの発行は、各医療機関にプロトコールの作成と運用を強く促す狙いもあります。

 

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次ページ実際に運用されている対応フロー

※本連載は青柳智和氏の著書『看護師2.0 逼迫する医療現場に求められる これからの看護師の役割』(幻冬舎メディアコンサルティング)の中から一部を抜粋・再編集したものです。

看護師2.0 逼迫する医療現場に求められる これからの看護師の役割

青柳 智和

幻冬舎メディアコンサルティング

急速に進む超高齢社会と医師不足、医師の偏在という課題に直面する医療現場では、看護師の役割拡大が急務となっています。これまで看護師の役割は、患者の症状に異変が生じた際に医師の処置を補助するというものでした。しかし…

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