(※写真はイメージです/PIXTA)

楽しいこともツラいことも乗り越え、長年ともに生きてきた夫婦。しかし多くの場合、死はそれぞれのタイミングで訪れます。夫婦2人から1人になっても、暮らしていけるでしょうか? 本記事では共働きをしていたAさん夫婦の事例とともに、夫婦の一方が亡くなった場合にたちはだかるお金の問題について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

共働き夫婦の落とし穴「先あて」

前段で計算した遺族厚生年金額から、受け取る人(今回は妻)に妻自身の老齢厚生年金があると、遺族厚生年金額から、妻自身の老齢厚生年金額を差し引いた金額を受け取ることになります。これを「先あて」といいます。

 

先あてにより、夫は自身の老齢厚生年金が高いため遺族年金は受け取れません。妻は遺族厚生年金(126万4,740円)が高いものの、妻自身の老齢厚生年金と差額支給のため、遺族厚生年金としては20万8,551円(月額1万7,379円)となります。

遺族厚生年金のよくある誤解

1.妻に老齢厚生年金があっても遺族年金は全額受け取れる

Aさんの妻に、妻自身の老齢厚生年金が105万6,189円あります。前段の「先あて」により、妻の老齢厚生年金を先に受け取るため、実際の遺族厚生年金は、126万4,740円−105万6 ,189円=20万8,551円となります。老齢厚生年金と遺族厚生年金の両方を全額受け取ることはできません。

 

2.老齢年金と遺族年金のどちらかを選択しないといけない?

公的年金は原則1人1年金です。種類の違う年金を受け取る権利のある人は、どちらかを選択することになります。ですが65歳以上の人は、遺族厚生年金の一部または全部をあわせて受け取ることができます。ただし、「先あて」によりAさんの妻が受け取る遺族年金は20万8,551円となります。

 

3.老齢基礎年金は妻自身の年金を受け取り続ける

妻自身の年金は終身で受け取れます。老齢基礎年金は遺族厚生年金の計算とは関係ないため、夫の老齢基礎年金はなくなります。仮にAさんの妻がずっと専業主婦であった場合、夫が亡くなると、妻の老齢基礎年金と遺族厚生年金を受け取ることになります。

現行の遺族年金制度で損をする共働き夫婦

説明を聞き終えたAさんの妻は、思わず聞き返します「夫の遺族厚生年金は本当にこれだけですか? 月額の間違いでは?」。しかし、年金事務所の職員は首を振ります。

 

Aさんは「ずっと2人で頑張って働いてきた人は損じゃないか。これじゃあ、お前のことを遺してウカウカ死ねないよ……」。Aさんは自分が先に死んでしまった場合、遺された妻の生活が危ぶまれることを知り、1日でも長く生きることを心に決め、より一層健康に気を付けるようになりました。

 

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