(※写真はイメージです/PIXTA)

楽しいこともツラいことも乗り越え、長年ともに生きてきた夫婦。しかし多くの場合、死はそれぞれのタイミングで訪れます。夫婦2人から1人になっても、暮らしていけるでしょうか? 本記事では共働きをしていたAさん夫婦の事例とともに、夫婦の一方が亡くなった場合にたちはだかるお金の問題について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

年金事務所で確認できる「遺族年金額」

公的年金は、「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の3種類があります。どの年金もリスクに備える年金です。

 

なかでも遺族年金は、一家の働き手の人や年金を受け取っている人が亡くなったとき、要件を満たす遺族の人に支給されます。年金制度の内容は、度々改定されてきましたが、現行の遺族年金制度は、働き方が多様化し、1996年から増加した共働き夫婦が多い現代とそぐわないとの意見もあることをご存じでしょうか。

 

終活を考え始めた元共働き夫婦、年金事務所へ

共働きだったAさん夫婦は、同い年の67歳。Aさんと妻は大学の同級生で、結婚当初から仲睦まじく暮らしています。Aさんに特段の既往症はありませんが、60歳から再雇用で働いていた仕事も引退し、年金生活に突入しました。時間もできたし、そろそろ終活や相続も本格的に考える時期かと、妻と話をしています。

 

配偶者が亡くなったとき、要件を満たすと遺された配偶者に遺族年金が支給されます。厚生労働省の「簡易生命表2023(令和5)年」によると日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.14歳となっています。Aさん夫婦であれば、平均余命は67歳で男性が17.94年、女性は22.59年です。

 

「お互いあと、20年あるかどうか。一般的に女性のほうが長生きするよね。僕が死んだあとの遺族年金がどうなっているのか調べておきたいね」と、2人で遺族年金の試算をしてもらうため、年金事務所に行きました。そこで妻が受け取る遺族年金額に驚愕します。

 

もともと、Aさん夫婦が2人で受け取っている年金額は416万円、月額に換算すると34万円です。

 

出所:筆者作成
[図表1]Aさん夫婦の年金額(単位:円) 出所:筆者作成

 

夫:平均標準報酬額560,000×5.481/1000×480月で計算
妻:平均標準報酬額410,000×5.481/1000×470月で計算
老齢基礎年金は2024年度満額。差額加算等は除く。

 

遺族年金には、

 

・国民年金部分である「遺族基礎年金」

・厚生年金保険部分である「遺族厚生年金」

 

の2つがあります。遺族基礎年金は要件を満たした子、または子のある配偶者が受け取ることができるため、子がいなければ支給されません。

 

要件を満たすと、上乗せの遺族厚生年金を受け取ることができます。遺族厚生年金の計算は、亡くなった人の厚生年金の加入期間や報酬の額をもとに計算します。原則、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です(①)。

 

さらに、65歳以上で年金を受け取っている妻の場合、夫の死亡による遺族厚生年金を受け取る場合、前段と前段で計算された遺族厚生年金の3分の2と妻の老齢厚生年金の2分の1を合計した額(②)を比較し、高いほうが遺族厚生年金の額となります。

 

出所:筆者作成
[図表2]遺族厚生年金(単位:円) 出所:筆者作成


しかし、老齢厚生年金を受け取っている人が実際に受け取れる遺族厚生年金は、異なるのです。

 

次ページ誤解されやすい遺族厚生年金

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