「株主優待券」でレストランでの飲食がお得に!
「お誕生日おめでとう! 乾杯!」
友達の智恵がお祝いにと、おしゃれなレストランでの食事に誘ってくれた。
「お互い社会人になって忙しくてなかなか時間が作れなかったけど、今日は久しぶりに会えたし、思いっきり話そうね」
「ありがとう!」
何年ぶりだろう。智恵は高校時代の親友。クラス委員も部活も積極的な智恵とはなぜか馬が合った。恋愛も奥手の私に対して、親身になっていろいろとアドバイスしてくれた。
楽しい時間があっという間に過ぎて、お会計のとき、私がお財布を出そうとしたら、智恵は、いいからいいからと私の手を上から押さえた。
「ホントにイイの? 悪いよー」
「いいのいいの。ちょっと、お得な券も使えるから。これ、私も使ってみたいのよ。だから気にしないでね」と智恵は自信満々にニッコリと笑った。
お得な券? なんだろうと、私は遠目に見てみると『株主様ご優待』と券に書かれているような・・・。
「ご利用、ありがとうございました」
レストランを出てから、思い切って智恵に聞いてみた。
「ほんとにありがとう。さっきの券、見たことないけど、あれ何の券?」
「あれね、株主優待券。お兄ちゃんにもらったの」
「株主ゆうたい・・・?」私は何のことかよくわからないまま返事した。
「私のお兄ちゃん、株の取引をいくつかやっているんだよね。この間、どこか美味しいお店知らない? って聞いたら、ちょうど株主に送ってきたこの券をくれたの。お料理もおススメだから行っておいでって」
「ふーん、株でこんな券をくれるところがあるんだー」
「就活のときも、株式投資で調べた企業の話とかよく教えてくれたんだ」
「へぇ、就活のときも? 株って企業のこととか詳しくないとできないもんね。そんなお兄ちゃん、いいなぁ」
一定数以上の株を所有する株主に送られる「株主優待」
電車を降りると智恵が何かを発見した。
「あ、うちの車だ。あれ? お兄ちゃんがいる!」
見ると、駅前の駐車場で智恵のお兄さんがちょうど剣道の荷物を出し入れしていた。身長は177センチくらいのスポーツマン風で結構イケメンかも。
「おお。ちょうど帰り? これから帰るけど、よかったら一緒に乗ってく?」
結局、お兄さんの車に乗せてもらって私も家まで送ってもらうことになった。
智恵がいつになく楽しそうな声で言った。
「楽しかったぁ♪」
「よかったな。高校からの親友だもんね。2人で久しぶりに話せて」お兄さんも嬉しそうに言った。
「はい。お兄さんの紹介のお店、とっても素敵で美味しかったです」
「そんなに喜んでもらえて僕も嬉しいよ。あと、お兄さんなんてよそよそしいから大輔でいいよ」
「じゃあ、大輔さん。ありがとうございます」と私は少し照れるように言ってみた。
「それに結局おごってもらっちゃって、2人にはホントに感謝です!」
「うふふ、秘密兵器の株主優待券だもんね。私のお財布の中身は変わらなーい」
私は、やっぱり気になって智恵に聞いてみた。
「ねぇねぇ、その秘密兵器、株主優待券ってどんなものなの?」
「えっと・・・。お兄ちゃん、説明お願い(笑)」
「なんだよー。この間、智恵には話したじゃん」
帰りの車の中は、株主優待券の話題でもちきりになった。私には、大輔さんがとっても知的な男性に見えて、しばらく緊張していた。
「株主優待って、会社が株主に対するお礼の1つとして、何か優遇をしてくれるサービスなんだ。ちょうど、あのお店のグループ会社の株を持っていて、この間、送ってきてくれたんだよ」
「どんな人がもらえるんですか?」私はおそるおそる大輔さんに聞いてみたが、智恵がここぞとばかりに自分の知っている知識を話したくて会話に割り込んできた。
「杏奈、それいい質問!それは私でもわかる。その会社の株を買った株主だよね。お兄ちゃん」
「確かにそうだけど、まだ説明が足りないよ。株主優待は、その会社の決算日に合わせた権利確定日に、一定数以上の株を持っている株主に対して提供されるものなんだ。その内容は会社によってまちまちさ」
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。私たちに株式投資のことをもっと教えてよ。杏奈も興味あるでしょ?」
「あっ、はい! もし、ご一緒できるのなら・・・」
「うーん、そうか。時間をどこで作るかだよなぁ。みんな仕事があるから時間あるのは土日くらいでしょ? 僕は、週末に剣道があるし・・・。そうだ!月2回くらいだけど、僕の剣道の練習の前後や移動中ならいいかも」
「うわー、練習後は、汗臭いと思うけどね。杏奈それでもいい?」と言いながらも、智恵は私と一緒に3人で株式投資の勉強できるのをさも嬉しそうに誘った。私もみんなと一緒に話せる楽しみができて、なんだか嬉しくなった。