株式投資は「ゼロサムゲーム」ではない
杏奈さんのように、投資をしようとすると、家族や身近な人から「危ないからやめなさい」と言われることも多いのではないでしょうか? 実際、今までの経済の動きの中で、バブル崩壊やリーマンショックなどで、株式投資をしても損をしたという経験を持つ人はたくさんいます。
ここでは損をするか得をするかという視点ではなく、株式投資とは何なのか、株がどんな役割を持っているのかという視点から整理してみましょう。
本来、株式投資はギャンブルとは違います。ギャンブルは、いわゆる賭け事で、負けた人のお金が勝った人の懐に入ることが多いです。競馬や競輪などをイメージするとわかりやすいですが、何割または何%かの人が勝った、当たったとすると、それに参加して負けたり外れたりした分のお金が、勝者や当選者の取り分に回るという仕組みです。
これは、参加者の得点と失点の合計(サム)がゼロになるという意味で、経済学におけるゲーム理論から「ゼロサムゲーム」と言われています。
それに対して、株式投資は、会社が発行する株を購入して株主になり、経営に参加することで配当を得たり、途中で株を売却することで、株価の値動きから利益(場合によっては損失)を実現したりすることを言います。
株は、会社が経営に必要なお金を集めるために投資家から出資を募るものです。それによって、集まったお金をもとに、会社は人や設備などを準備して事業を進めることができます。その会社が提供する商品やサービスが売れて業績が上がり、決算で利益が出れば、その中から株主へ配当がなされて、みんなで経営の成果をシェアすることができるのです。
株式投資は、会社の価値が高まることで、「プラスサムゲーム」になる可能性もあるという点で、「ゼロサムゲーム」というギャンブルとは大きな違いがあります。
会社のやっていることが社会の中で認められ、評価されてくると、当然、この会社へもっとお金を出したい、出資したいという人が増えてきます。その結果、その会社の株を買うというオファーも増えてくるので、需要と供給の関係から、会社の株価も上昇するでしょう。その会社が生み出す付加価値が、株価に反映されていくとも言えます。
ただし、一方でその逆もあり、世の中の環境変化に適応できなかったり、会社が不祥事を起こして世間の信頼を裏切るようなことがあったり、業績が落ちたりするとどうでしょうか?
当然、会社の財政も厳しくなり、株主へ配当をする余裕もなくなってくるでしょう。それと同時に会社に対する魅力が落ちて、株を売りたい人が増え、株価も下がる傾向が強くなります。
株価は、約束された固定されたものではなく、会社の価値に対する投資家全体からの評価が映し出されたものと言えるでしょう。
「目的」も「仕組み」も違う株式投資とギャンブル
杏奈さんのように「英語で言うなら何か?」を調べるのも、本来の意味の違いを確認するのにとても役立つ方法です。
株は、「share」とか「stock」と表現されますが、「share」は、経営の成果を投資家が共有できるという意味から、一方、「stock」は会社側にとって投資されたお金を蓄積して使えるという意味があります。
ギャンブル、博打は、英語でも「gamble」で、やはり目的も仕組みも違うことがわかっていただけたでしょうか?
とはいえ、「ギャンブルではない、株主は会社の経営者の1人なんだ」と頭ではわかっていながらも、博打のように株価の値上がり値下がりだけに目を付けて株式投資をやっている人も意外と多いようです。これから上がるだろうと期待して株を購入し、期待通りいかずに株価が下がってしまったことを悔いる人も本当にたくさんいます。
単なる予想や期待で株を買ってしまったり、世の中の情報に振り回されてしまわないように上手に付き合っていくことが何より大事なのです。株式投資を通じて、自分と社会経済がつながって、自分らしく味わい楽しんで人生を過ごせるような投資の考え方や行動の仕方を、一緒に学んでいきましょう。