ネットを通じて簡単に売買できるのが利点だが・・・
今日は、大輔さんの剣道の帰りに3人でカフェに入った。
「この間のクイズ面白かったです。目からウロコでした。なかなか聞けない話をありがとうございました」堂々と自分から大輔さんにお礼や感想を言えるようになった自分に、私はちょっと驚いた。
「それは良かった」と大輔さんもにっこり笑う。
「今日は何から話そうか、何か聞きたいことある?」智恵も遠慮しないでと言わんばかりに私の背中を押す。
「なんか、こんなこと聞くの、恥ずかしいんですが、株ってどうやって買ったり売ったりしているんですか? 株のことで頭いっぱいになって、食事も喉を通らないとか、おじさんが言っていたのを思い出しまして」
「うわー、そこまで・・・。何のために株やってんだか」智恵はあきれ顔で言った。
一呼吸おいて、大輔さんは説明をしてくれた。
「僕たちが今、株を買ったり売ったりできるのは、証券取引所と証券会社の存在が大きいんだ」
「証券取引所と証券会社? 証券会社は駅の近くによく支店があるけど、証券取引所は見たことがないです」駅前のグリーンや青の大きな看板を思い出しながら私は言った。
「証券取引所は、株の買い注文と売り注文をマッチングさせて成立させているところだよ。国内だけでなく海外からのたくさんの投資家の注文が入ってくるから、ものすごいシステムを持っているはずだよ」
「円形のボードにたくさんの株価がぐるぐる回っていたり?」智恵は楽しそうに、はしゃぐが、私は、その先を早く知りたくて質問した。
「株を発行してお金を集めたいという会社もそこに集まってくるんですか?」
「場所ではなくシステムとしてね。株主を広く一般から集めてお金を調達したいという会社は、一定の審査基準をクリアして証券取引所に上場するんだ。それによって、投資家も安心して会社を選べるようになるっていうわけ」
「その証券取引所には、私たちが行って株の売買をできるんですか?」
「残念。僕たちは証券取引所に行っても取引はできず、ある金融機関を通じて買い注文や売り注文を出して取引するんだよ。そのある金融機関とは?」
「あ、証券会社だ!」智恵と私は口を揃えて言った。
「ご名答! だから、僕たちは証券会社に口座を開いて、自分のお金をまずその口座に入れて、証券会社で注文をしていくことになるんだ」
「銀行じゃなく、証券会社なんですね。今まで私は銀行の預金口座しか持ったことがなかったから、ちょっとドキドキします」という私の言葉にも、大輔さんはおおらかに答える。
「ドキドキする必要なんてないよ。証券会社はお金を預ける所じゃなくて、売買取引を取り次いでもらうところだしね。証券取引所という株の売買注文が集まるところとつながる窓口と思えばいいよ。今は、ネットを通じて簡単に売買注文を出せるようになってきているからね」
簡単に売買できるからこそ、お金や時間の管理が重要
こうやって株って、売買が成立していくのか・・・。なんとなく私はイメージしながら、本業が手につかなくなるくらい株にのめり込むってどういうことなのか、不思議に思った。
「そんなにしっかりとしたシステムがあって、ネットで便利に株の投資ができる中で、株にのめり込んでしまうのは、何が原因なんですか?」私は、お人好しのおじさんの轍を踏まないようにと思いながら聞いてみた。
「うーん、その人がお金をギリギリまで株へ充ててしまって余力がなくなっていたり、いつまでに何にお金が必要という時間的な管理も猶予がなくなってきているのが原因なんじゃないかなー」
ちょっと考えて、大輔さんは続けた。
「ちょうどいい落としどころになったね。株の投資を楽しめなくなる最大の原因は、この3つにあると僕は思う。
①自分のお金の使い方の未来ビジョンがない
②変化に対する許容度、いわゆるリスク許容度を自分で理解していない
③ビジョンだけでなく、地に足付けたお金の管理をしていない
君たちが株をはじめて落とし穴にはまらないように、次回から、順にクリアにしていこうか」
すごい話になってきた・・・。これは単なる株の話ではないぞと思い、私はワクワクしてきた。